ポールの曲:『ザ・マン(The Man)』
美しい曲である。
今回のリマスター盤発売で『タッグ・オブ・ウォー』よりもむしろ『パイプス・オブ・ピース』の良さを再認識したファンはけっこう多かったのではないだろうか。そして僕がもう1つ再確認したのはポールとマイケル・ジャクソンのコラボレーションのすばらしさだった。
純粋に共作という観点からみれば、僕はポールとマイケルのほうがスティーヴィーとのそれよりもはるかに成功したと思っている。一人のアーティストとして見たならば僕はスティーヴィーのほうがマイケルよりもずっと好きなのだが、ことポールとの共作に関してはスティーヴィーは「なくてもよかった」ぐらいにさえ思っているのである。『エボニー・アンド・アイヴォリー』はポールのソロで十分だし、『ホワッツ・ザット・ユー・ドゥーイング』に至っては特に入れなくてもよかった、いや他の曲に差し替えたほうが『タッグ・オブ・ウォー』はもっといいアルバムになったぐらいに思っているのである。つまり共作という作業に関して言うならば、ポールとマイケルは極めて相性がよかったということなのだ。
『セイ・セイ・セイ』と『ザ・マン』、この記念すべき共作(1981年5月頃)の直後、マイケルは『スリラー』というモンスターアルバムを制作し(1982年4月~7月)、一躍時の人となる。マイケルに人並み外れた才能があったのは疑う余地はないが、このポールとの共作活動が世界で最も売れたアルバムの誕生に大きく寄与したことは間違いない。しかも、『ガール・イズ・マイン』という共演作まで収録されているのだからなおさらである。つまり、ポールという存在がなければ、『スリラー』という名作はけっして生まれなかったということなのだ。それぐらいの大きな化学反応が『セイ・セイ・セイ』と『ザ・マン』の制作過程で起こったのではないかと僕は推測する。
だが運命とは時に思いもよらぬ方向に進むものだ。およそ人として考えうる限りの名声と富を手にいれたマイケルは日本流に言うならばいとも簡単に「恩を忘れて」ポールにほぼ無断でビートルズの版権を手に入れる。そして様々な奇行やスキャンダルで世間を騒がせるようになり、ついに2009年ポールとも絶縁状態のまま50才という若さでこの世を去るのである。
もし『スリラー』というアルバムがなかったなら、ポールとマイケルの関係はその後も長く続き、さらなる名曲を生み出したのではないか、そしてマイケル自身ももっと長生きしたのではないか、などと僕はつい考えてしまう。それほど音楽的にはポールとマイケルは相性が良かったと思うのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが『ザ・マン』である。
なんといっていいのか、この曲はとても特殊な曲だと思う。冒頭で「美しい曲」とだけ書いたのも、この曲がジャンルを超えた名曲と思うからだ。ポップスでもない、ロックでもない、またブラックミュージックでもない、いろんな要素を含んだとても独創的な曲だと思う。今回のリマスターによってサウンドがよりクリアになり、音圧も修正されてアルバムの中の1曲として違和感なく聴けるようになった。
ジョージ・マーティンによるオーケストラのストリングスで始まり、ポールによるものと思われる印象的なギターリフからポールのヴォーカル⇒マイケルのヴォーカル⇒2人のハーモニー⇒ヴォーカルの掛け合いと続くゾクゾクするような展開。そして、なんとそこにリンダのヴォーカルとコーラスが大胆にも加わってくるのである!この曲をとても特別にしているもの、その理由の1つはこのリンダのヴォーカルにあると僕は思っている。
よく聴いていただきたい。リンダはただコーラスだけではなく、あるパートではマイケルとヴォーカルを分け合ってさえいるのである。しかも、記録によればこれはマイケル自身が進言したというのだから天才の感性、感覚というのはわからないものだ。ともかく、少なくともこの曲においてはリンダのヴォーカルは非常に効果的で、一種独特の雰囲気を醸し出すのに成功していると僕は思う。
そうしてハタと気がついた。リンダもマイケルも、もうこの世にはいないのだと・・・。そして目には涙が・・・。ポールが今まだ僕たちと共にあることが奇跡のように思える。生きているということは本当にすばらしいことだ。
■『パイプス・オブ・ピース』スーパー・デラックス・エディション(2CD+DVD)
国内盤定価 16,200円(税込)
アマゾン
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/ 楽天ブックス / UMJ
海外盤
HMV
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タワーレコード / KINGSROAD(海外サイト)
■『パイプス・オブ・ピース』デラックス・エディション(2CD)
国内盤定価 3.996円(税込)
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今回のリマスター盤発売で『タッグ・オブ・ウォー』よりもむしろ『パイプス・オブ・ピース』の良さを再認識したファンはけっこう多かったのではないだろうか。そして僕がもう1つ再確認したのはポールとマイケル・ジャクソンのコラボレーションのすばらしさだった。
純粋に共作という観点からみれば、僕はポールとマイケルのほうがスティーヴィーとのそれよりもはるかに成功したと思っている。一人のアーティストとして見たならば僕はスティーヴィーのほうがマイケルよりもずっと好きなのだが、ことポールとの共作に関してはスティーヴィーは「なくてもよかった」ぐらいにさえ思っているのである。『エボニー・アンド・アイヴォリー』はポールのソロで十分だし、『ホワッツ・ザット・ユー・ドゥーイング』に至っては特に入れなくてもよかった、いや他の曲に差し替えたほうが『タッグ・オブ・ウォー』はもっといいアルバムになったぐらいに思っているのである。つまり共作という作業に関して言うならば、ポールとマイケルは極めて相性がよかったということなのだ。
『セイ・セイ・セイ』と『ザ・マン』、この記念すべき共作(1981年5月頃)の直後、マイケルは『スリラー』というモンスターアルバムを制作し(1982年4月~7月)、一躍時の人となる。マイケルに人並み外れた才能があったのは疑う余地はないが、このポールとの共作活動が世界で最も売れたアルバムの誕生に大きく寄与したことは間違いない。しかも、『ガール・イズ・マイン』という共演作まで収録されているのだからなおさらである。つまり、ポールという存在がなければ、『スリラー』という名作はけっして生まれなかったということなのだ。それぐらいの大きな化学反応が『セイ・セイ・セイ』と『ザ・マン』の制作過程で起こったのではないかと僕は推測する。
だが運命とは時に思いもよらぬ方向に進むものだ。およそ人として考えうる限りの名声と富を手にいれたマイケルは日本流に言うならばいとも簡単に「恩を忘れて」ポールにほぼ無断でビートルズの版権を手に入れる。そして様々な奇行やスキャンダルで世間を騒がせるようになり、ついに2009年ポールとも絶縁状態のまま50才という若さでこの世を去るのである。
もし『スリラー』というアルバムがなかったなら、ポールとマイケルの関係はその後も長く続き、さらなる名曲を生み出したのではないか、そしてマイケル自身ももっと長生きしたのではないか、などと僕はつい考えてしまう。それほど音楽的にはポールとマイケルは相性が良かったと思うのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが『ザ・マン』である。
なんといっていいのか、この曲はとても特殊な曲だと思う。冒頭で「美しい曲」とだけ書いたのも、この曲がジャンルを超えた名曲と思うからだ。ポップスでもない、ロックでもない、またブラックミュージックでもない、いろんな要素を含んだとても独創的な曲だと思う。今回のリマスターによってサウンドがよりクリアになり、音圧も修正されてアルバムの中の1曲として違和感なく聴けるようになった。
ジョージ・マーティンによるオーケストラのストリングスで始まり、ポールによるものと思われる印象的なギターリフからポールのヴォーカル⇒マイケルのヴォーカル⇒2人のハーモニー⇒ヴォーカルの掛け合いと続くゾクゾクするような展開。そして、なんとそこにリンダのヴォーカルとコーラスが大胆にも加わってくるのである!この曲をとても特別にしているもの、その理由の1つはこのリンダのヴォーカルにあると僕は思っている。
よく聴いていただきたい。リンダはただコーラスだけではなく、あるパートではマイケルとヴォーカルを分け合ってさえいるのである。しかも、記録によればこれはマイケル自身が進言したというのだから天才の感性、感覚というのはわからないものだ。ともかく、少なくともこの曲においてはリンダのヴォーカルは非常に効果的で、一種独特の雰囲気を醸し出すのに成功していると僕は思う。
そうしてハタと気がついた。リンダもマイケルも、もうこの世にはいないのだと・・・。そして目には涙が・・・。ポールが今まだ僕たちと共にあることが奇跡のように思える。生きているということは本当にすばらしいことだ。
■『パイプス・オブ・ピース』スーパー・デラックス・エディション(2CD+DVD)
国内盤定価 16,200円(税込)
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