武道館公演レビュー・・・その前に
武道館ライヴ完全版を観た。
すばらしかった。しかし、のっけから恐縮だがライヴ自体の感想を書く前に少しだけ、いや大いに文句を言わせていただきたい。そうチケット代の事である。以下かなり批判的な内容になってしまうので、読みたくない方はこのままスルーしてください。
ウィキペディア英語版の「Out There Tour」のページを見ると、各会場と座席数/売上金額が掲載されている。このデータをもとにして売上金額を全座席数(実際にチケットが売れた座席数)で割ると1座席当たりの大まかな平均チケット金額が算出できる。
まず今回の武道館1公演の売上高は約687万ドル(約8億2千万円/1ドル120円換算)。これは今回の東京ドーム1回当たりの平均売上約701万ドル(約8億4千万円)とほぼ同額である。つまり武道館の超高額チケットは、1回の公演売上高を東京ドームと同等にするという考え方がベースにあったことが容易に想像される。
では1座席当たりの平均チケット単価はどうなのか?687万ドルを武道館11,833シートで割ると約581ドル(約6万9千円)と出た。ちなみに東京ドームの場合は1座席当たり約145ドル(約1万7千円)である。この金額は1座席当たりの平均単価なので、現実からはそれほど隔たってはいないことがまず確認できる。
でも武道館は会場が小さいし、座席数も少ないから単価が高くなるのは仕方がないと思う人もいるかもしれない。しかし、実はそうでもないのである。
以前の記事でも書いたが、アウト・ゼア・ツアーは日本以外の国々ではスタジアム級の会場よりもむしろ収容人員2万人以下のアリーナ級の会場のほうが多い。つまり会場の大きさからいえば武道館はまったく例外などではなかったのである。
実際に例を挙げよう。例えば2015年6月23日に行なわれたアメリカ、シャーロッツビル、ジョン・ポール・ジョーンズ・アリーナ公演での座席数は12,974で武道館とほぼ同じ。しかし売上高は約202万ドル(約2億4千万円)で武道館公演の3分の1にも満たないのである(チケットはソールドアウト)。1座席当たりの平均単価も約156ドル(約1万8千円)と東京ドームとほぼ同じであった。
念のため過去の公演における会場の大きさとチケット代とのバランスに着目してざっと目を通してみたのだが、会場が小さければスタジアムよりは平均単価が高くなるという傾向はあるものの、だからといって特別チケット代が高騰するという事実は認められなかった。また日本の主催者は「日本は海外よりチケットが安い」と豪語していたが、1公演単位の平均チケット価格で見ると必ずしも海外より安いとはいえない。むしろ高いくらいであり、海外の場合は良い席はより高く、悪い席はより安くという納得できる価格設定がされている。日本のようにどこもかしこもS席という不条理な販売方法を取っていないだけまだましとも言えると思う。
とにかく「なぜか世界の中でただひとつの例外として、武道館公演だけがチケット代が異常に突出している」のである。
だが武道館がそこまで特別たるゆえんとはいったい何なのか?正直言って僕はここになんだか得体の知れない気味の悪いものを感じてしまうのである。
ひとつの大きな理由は「49年前にビートルズが公演を行なった聖地」ということであろう。
だがビートルズが公演を行なった聖地など世界中にそれこそ数えきれないほどある。そしてそれを口実にチケット代を何倍にも値上げしたという前例は世界にはない。なんとそれは今回我々の日本が初めてのケースなのだ!これはある意味タブーを破ってしまったともいえる。そしてその暴挙が大手を振ってまかり通ってしまうところに、僕は日本という国の危うさと弱さを見るのである。この事実に僕は愕然とし、ただ能天気に「ポール万歳!」と喜んでばかりはいられない気分になってしまうのだ。(しかしながら本記事はポール個人の批判を目的としたものではない。その原因が何であれ、まずは立ち止まって現実に目を向けようということだ。)
実は僕はポールのコンサートは10万円の価値がない、などとは思っていない。むしろずっと前から10万円以上の価値はあると思っているくらいだ。だが僕が問題提起したいのはその点ではない。僕は「日本だけ」というところに反対しているだけなのだ。他の国でやっていないことを日本だけに持ち込むなかれ、と。
コンサートはたしかにすばらしかった。それは大成功だった。ファンとしてこれほど嬉しいことはない。だが、それとチケットの価格は別の話だ。今回成功したからといって10万円チケットが当たり前だと思われては困るのである。いいですか主催者さん。今回成功したからといって10万円チケットが当たり前だと思われては困るのである!我々は問題をごちゃ混ぜにしてはならないし、思考停止に陥ってもいけない。まずはこの事実をしっかりと確認した上で次回武道館ライヴの感想をお送りしたい。
すばらしかった。しかし、のっけから恐縮だがライヴ自体の感想を書く前に少しだけ、いや大いに文句を言わせていただきたい。そうチケット代の事である。以下かなり批判的な内容になってしまうので、読みたくない方はこのままスルーしてください。
ウィキペディア英語版の「Out There Tour」のページを見ると、各会場と座席数/売上金額が掲載されている。このデータをもとにして売上金額を全座席数(実際にチケットが売れた座席数)で割ると1座席当たりの大まかな平均チケット金額が算出できる。
まず今回の武道館1公演の売上高は約687万ドル(約8億2千万円/1ドル120円換算)。これは今回の東京ドーム1回当たりの平均売上約701万ドル(約8億4千万円)とほぼ同額である。つまり武道館の超高額チケットは、1回の公演売上高を東京ドームと同等にするという考え方がベースにあったことが容易に想像される。
では1座席当たりの平均チケット単価はどうなのか?687万ドルを武道館11,833シートで割ると約581ドル(約6万9千円)と出た。ちなみに東京ドームの場合は1座席当たり約145ドル(約1万7千円)である。この金額は1座席当たりの平均単価なので、現実からはそれほど隔たってはいないことがまず確認できる。
でも武道館は会場が小さいし、座席数も少ないから単価が高くなるのは仕方がないと思う人もいるかもしれない。しかし、実はそうでもないのである。
以前の記事でも書いたが、アウト・ゼア・ツアーは日本以外の国々ではスタジアム級の会場よりもむしろ収容人員2万人以下のアリーナ級の会場のほうが多い。つまり会場の大きさからいえば武道館はまったく例外などではなかったのである。
実際に例を挙げよう。例えば2015年6月23日に行なわれたアメリカ、シャーロッツビル、ジョン・ポール・ジョーンズ・アリーナ公演での座席数は12,974で武道館とほぼ同じ。しかし売上高は約202万ドル(約2億4千万円)で武道館公演の3分の1にも満たないのである(チケットはソールドアウト)。1座席当たりの平均単価も約156ドル(約1万8千円)と東京ドームとほぼ同じであった。
念のため過去の公演における会場の大きさとチケット代とのバランスに着目してざっと目を通してみたのだが、会場が小さければスタジアムよりは平均単価が高くなるという傾向はあるものの、だからといって特別チケット代が高騰するという事実は認められなかった。また日本の主催者は「日本は海外よりチケットが安い」と豪語していたが、1公演単位の平均チケット価格で見ると必ずしも海外より安いとはいえない。むしろ高いくらいであり、海外の場合は良い席はより高く、悪い席はより安くという納得できる価格設定がされている。日本のようにどこもかしこもS席という不条理な販売方法を取っていないだけまだましとも言えると思う。
とにかく「なぜか世界の中でただひとつの例外として、武道館公演だけがチケット代が異常に突出している」のである。
だが武道館がそこまで特別たるゆえんとはいったい何なのか?正直言って僕はここになんだか得体の知れない気味の悪いものを感じてしまうのである。
ひとつの大きな理由は「49年前にビートルズが公演を行なった聖地」ということであろう。
だがビートルズが公演を行なった聖地など世界中にそれこそ数えきれないほどある。そしてそれを口実にチケット代を何倍にも値上げしたという前例は世界にはない。なんとそれは今回我々の日本が初めてのケースなのだ!これはある意味タブーを破ってしまったともいえる。そしてその暴挙が大手を振ってまかり通ってしまうところに、僕は日本という国の危うさと弱さを見るのである。この事実に僕は愕然とし、ただ能天気に「ポール万歳!」と喜んでばかりはいられない気分になってしまうのだ。(しかしながら本記事はポール個人の批判を目的としたものではない。その原因が何であれ、まずは立ち止まって現実に目を向けようということだ。)
実は僕はポールのコンサートは10万円の価値がない、などとは思っていない。むしろずっと前から10万円以上の価値はあると思っているくらいだ。だが僕が問題提起したいのはその点ではない。僕は「日本だけ」というところに反対しているだけなのだ。他の国でやっていないことを日本だけに持ち込むなかれ、と。
コンサートはたしかにすばらしかった。それは大成功だった。ファンとしてこれほど嬉しいことはない。だが、それとチケットの価格は別の話だ。今回成功したからといって10万円チケットが当たり前だと思われては困るのである。いいですか主催者さん。今回成功したからといって10万円チケットが当たり前だと思われては困るのである!我々は問題をごちゃ混ぜにしてはならないし、思考停止に陥ってもいけない。まずはこの事実をしっかりと確認した上で次回武道館ライヴの感想をお送りしたい。
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2015-07-23 │ 日本公演2015夢日記 │ Edit