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『スピード・オブ・サウンド』リマスター盤の感想 - Macca Go Go Go! ポール・マッカートニーファンブログ・・・プラス!PLUS!+!

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『スピード・オブ・サウンド』リマスター盤の感想

『ヴィーナス・アンド・マース』に引き続き、『スピード・オブ・サウンド』リマスター盤の感想をまとめておこう。

まずオリジナルアルバム(CD1)だが、今改めて『ヴィーナス・アンド・マース』と聴き比べてみると、ボールがリードヴォーカルをとっている曲が6曲しかないというのはやはり致命的ともいえるマイナスポイントに思われる。しかも6曲中『心のラヴ・ソング』と『幸せのノック』はベスト盤には必ず収録されている定番の大ヒット曲だから、新しいファン、そしてこれからポールの曲を本格的に聴いてゆこうという人たちにとってこのアルバムは最も手が出しにくい作品の一つになるのではないだろうか。ウイングス版『イエロー・サブマリン』みたいなものか…(笑)。ちなみに僕はリマスター盤が出るまでアルバム『イエロー・サブマリン』が買えなかった輩である(それだけに『ヘイ・ブルドッグ』1曲の衝撃は大変なものがあったが)。やはりアルバム収録曲の量と質というのは大切だ。

音質(サウンド)に関してだが、『スピード・オブ・サウンド』の音はポール自身がプロデュースした作品の中では個人的には最も出来のいい部類に入ると思っている。実際、自分が持っている旧CDの音もけっして悪いものではなかった。それゆえ個人的にはリマスター効果という点では『ヴィーナス・アンド・マース』ほどの驚きはなかったというのが正直なところである。『ヴィーナス・アンド・マース』のにぎやかな音とは対照的に、不必要な装飾を削ぎ落としたシンプルなサウンド。2枚のアルバムを聴き比べてみるのも面白いだろう。

次にボーナスディスク(CD2)だが、『ヴィーナス・アンド・マース』のボーナスディスクに比べると、どうしても物足りない印象を受けてしまう。もともと全7曲しか収録されていないのに加え、オリジナルアルバムに未収録の曲は『メッセージ・トゥ・ジョー(Message to Joe)』の1曲のみ。しかもこれが曲とさえ呼べないような作品ときているから困ったもの。よほど収録曲が足りなかったのだろう(笑)。これはポールがジョー・イングリッシュに向けたメッセージをただ単にヴォコーダーという「言葉を音声信号に変換する機器」に通しただけのものである。結局残り6曲はデモテイク集のような感じになってしまったわけだが、ここまでボーナスディスクの内容が薄くなってしまったのは、『スピード・オブ・サウンド』が他のアルバムに比べて制作にかけられた時間が極端に少なかったことに起因するものと思われる(『スピード・オブ・サウンド』は1976年の全米ツアー前に短期間でレコーディングされた)。

ボーナス・ディスクで最大の聴きものはやはりジョン・ボーナムがドラムスを担当した『愛の証し(Beware My Love)』だろう。僕はまずこんな未発表テイクが存在していたこと自体に大きな衝撃を受けてしまったのだが、熱心なファンの間ではジョン・ボーナム・ヴァージョンの存在は以前から噂されていたらしい。
ジョン・ボーナムについては今さら多くを語る必要はないだろう。そう、イギリスが生んだもう一つの偉大なるロックバンド、レッド・ツェッペリンの正ドラマーである。今回多くのファンがこの異色ともいえる共演に少なからず驚いたであろうが、ポールとツェッペリンの繋がりは意外にも深く、過去にジミー・ペイジを除くメンバー全員となんらかの形で共演を果たしている。
せっかくなので、この機会にそれら共演の概要について簡単にまとめておこう。

まず1979年にアルバム『バック・トゥ・ジ・エッグ』のロケストラのメンバーとしてジョン・ボーナム(ドラムス)とジョン・ポール・ジョーンズ(ベース)の2人がアビイ・ロード・スタジオでのレコーディングに参加。その後同年12月にポールが主催した「カンボジア難民救済コンサート」において上記2人にロバート・プラントを加えたツェッペリン3名がポールと同じステージ上で共演を果たしている。当時僕はなにげなく映像を見ていたものだが、今考えるとツェッペリンの現役時に4人中3人がポールとステージ上で共演したというのはそれだけで仰天の歴史的事実だと思う。やっぱりポールはすごい!!
その後ジョン・ボーナムは残念ながら1980年に若くして帰らぬ人となってしまったが、ジョン・ポール・ジョーンズはツェッペリンの解散後も1984年の『ヤア!ブロード・ストリート』のレコーディング(『心のラヴ・ソング)』)に参加し、同名映画にも出演している。このとき後ろでドラムスを叩いていたのがTOTOのジェフ・ポーカロだったが、もしボーナムがこの世にいたら彼がそこにいることになったのかもしれない。

さて今回発表されたテイクは『バック・トゥ・ジ・エッグ』から遡ること約3年。おそらく『スピード・オブ・サウンド』制作の前後にレコーディングされたものと思われる。当時ポールは『バンド・オン・ザ・ラン』と『ヴィーナス・アンド・マース』の成功により一度失いかけていた名声を完全に取り戻していたし、ツェッペリンもまた世界でも屈指のスーパーバンドとして不動の地位を確立していた。そして、そんな絶頂期にあった2人だったからこそ、極秘裏に行なわれたこのセッションはことさらに意義深く、またファンとして非常に興味をそそられるものがあるのである。まさかポールがボーナムをウイングスのドラマーとして迎え入れようとしていたとは思えないし、そんな事は世界が許さなかっただろうが(笑)、この時期にポールを突き動かしたものが何であったのかは大いに気になるところだ。いずれにしろ、この時のボーナムとのセッションが縁で、のちのロケストラでの再共演に繋がっていったものと推測される。

ジョン・ボーナム版『愛の証し』を聴いた僕の感想だが、率直に言ってジョン・ボーナムの力強く個性的なドラミングは、ポールの音楽とは相性があまり良くないように感じられた。彼のドラム演奏は強すぎて、あたかもポールのヴォーカルとケンカをしているように僕の耳には聴こえたほどである。ジョン・ボーナムは疑いなくロック史上最高のドラマーの一人だが、いかんせんポールの音楽とは合わなかったように思われる。よってウイングスのドラマーはジョー・イングリッシュでよかった。これが僕の偽らざる感想である。

残りのデモテイク5曲はポールの曲作りの過程を知ることができるという点においてファンにとってはやはり貴重な音源であると思う(『マスト・ドゥ・サムシング』はポールのヴォーカルということで期待していたのだが、あまり気合を入れて歌っていないのが少し残念だった)。以上、全体的に辛口の感想になってしまったが、オリジナルが弱い分ボーナスにもう少し魅力的なコンテンツが欲しかったというのが正直なところである。

参考:
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