ポールの曲:『サリーG』
大ヒットシングル『ジュニアズ・ファーム』のB面で、ポールにしては非常に珍しい本格的なカントリー・ソング。
今年11月に発売される『ヴィーナス・アンド・マース』アーカイヴ・コレクションのボーナスディスクにも収録予定だが、これまではなぜか『スピード・オブ・サウンド』のボーナス・トラックとして収録されていた。そのため、この曲が『スピード・オブ・サウンド』と同時期にレコーディングされたと思っている人もいるかもしれない。
しかし、実際には『ジュニアズ・ファーム』と『サリーG』は共にアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』のレコーディング直前にアメリカ・テネシー州のナッシュビルで録音されたものであり、同アルバムの先行シングルとして1974年10月に発売されている。つまり『スピード・オブ・サウンド』とは録音時期が完全にずれているのだ。
特筆すべきは『ジュニアズ・ファーム』と『サリーG』がアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』には収録されず、シングルのみで発売されたという点である。たしかに宇宙をコンセプトにしたアルバムのカラーには合わなかった等の説明は可能だが、これだけの名曲をアルバムに入れない決断をするには普通なら相当な勇気が必要だと思う。もしこれら2曲がアルバムに収録されていれば、アルバムセールスはさらに伸びただろうし、ポールの最高傑作という評価にさえつながったかもしれない。結局アルバムの価値を決めるものは、大抵の場合収録曲の質の高さだからである。
アルバム・アウトテイクの数の多さ、そしてそれらの異常なまでのクオリティの高さという点では世界でポールの右に出る者はいないだろう。普通ボーナス・トラックとかアウトテイクといえば、ごく一部のマニアックなファン向けのサービスか、あるいはオマケ程度のものでしかない。しかしポールの場合は全く違う。ポールの場合、それらのクオリティはいわゆる「正規発売品」と同等であることが非常に多いばかりではなく、時に「正規品」を凌ぐことさえあるのである(いやこれホント)。
そして今回特に『ヴィーナス・アンド・マース』のボーナスディスクは充実している。上述の2曲以外にも、既発売曲としては『ランチ・ボックス/オッド・ソックス』『ウォーキング・イン・ザ・パーク・ウィズ・エロイーズ』『ブリッジ・オン・ザ・リヴァー・スイート』の3曲のインストゥルメンタル・ナンバーは埋もれさせておくにはもったいない佳曲だし、『マイ・カーニヴァル』も実に楽しい小品だ。それ以外にも掘り出し物があるかもしれないから、たとえボックスセットは買わずとも、やはり『ヴィーナス・アンド・マース』のリマスター盤は買いである。
さてさて『サリーG』に話を戻そう。
僕が初めてこの曲を聴いたのは高校生の頃で、購入したのはアナログのシングル盤(ドーナツ盤)だった。だがそれもリアルタイムではなく、おそらく3年から4年遅れで買ったのだと思う。当時はポールやウイングスに関する情報があまり、というかほとんどなかった。だから、このシングルがチャートで何位になったのかだとか、どんな評価がされたのか、などといった情報を全く知らない状況で毎日毎日このシングルを繰り返し聴いていたことを思い出す(情報過多は時に不幸をもたらすのだ)。
しかし当時から、僕はこのB面の『サリーG』という曲が大好きだった。その頃はこの曲がカントリー風だということさえ知らずに聴いていたものだが、とにかく曲の良さに惹かれたのだった。シングルのA面がいい曲というのは当たり前だったが、B面というのは地味でつまらない曲が多いというのが当時でも常識だったから、僕はとても得をしたような気分になっていたものだ。
言っておくが僕はカントリー・ミュージックが嫌いである(笑)。けっして頭から決めてかかるつもりはないのだが、ほぼ全く生理的に受け付けないのである。そんな僕がこの曲だけは昔から例外的に好きだというのは、やはり本格的なカントリー・ソングといえども、そこにはやはりポールならではの味付けというものがあるからなのだろうと思う。何をやらせても自分の手の内に入れて完璧にこなしてしまうポールの底力。これもまたマッカートニーマジックなのだろう。こういったいわばロックからはみ出た曲の数々(そしてポールにはとても多い)を好きになれるのならば、ポールの音楽はきっと一生の友となってくれるだろう。
バックにはカントリーの本場ナッシュビルでプロのミュージシャンを起用しただけあって、演奏はとてもすばらしいものとなっている。ポールのヴォーカルも円熟の極みである。
参考:
『NEW』コレクターズ・エディション(CD 国内盤)
『NEW』コレクターズ・エディション(CD 海外盤)
『ヴィーナス・アンド・マース』ボックスセット 日本盤
アマゾン
/楽天ブックス/HMV
『ヴィーナス・アンド・マース』ボックスセット 海外盤
アマゾン 10/8現在未掲載/楽天ブックス 10/8現在未掲載/HMV
/Amazon.com(アメリカ)
/Amazon.ca(カナダ)
『スピード・オブ・サウンド』ボックスセット 日本盤
アマゾン
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『スピード・オブ・サウンド』ボックスセット 海外盤
アマゾン 10/8現在未掲載/ 楽天ブックス 10/8現在未掲載/HMV
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今年11月に発売される『ヴィーナス・アンド・マース』アーカイヴ・コレクションのボーナスディスクにも収録予定だが、これまではなぜか『スピード・オブ・サウンド』のボーナス・トラックとして収録されていた。そのため、この曲が『スピード・オブ・サウンド』と同時期にレコーディングされたと思っている人もいるかもしれない。
しかし、実際には『ジュニアズ・ファーム』と『サリーG』は共にアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』のレコーディング直前にアメリカ・テネシー州のナッシュビルで録音されたものであり、同アルバムの先行シングルとして1974年10月に発売されている。つまり『スピード・オブ・サウンド』とは録音時期が完全にずれているのだ。
特筆すべきは『ジュニアズ・ファーム』と『サリーG』がアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』には収録されず、シングルのみで発売されたという点である。たしかに宇宙をコンセプトにしたアルバムのカラーには合わなかった等の説明は可能だが、これだけの名曲をアルバムに入れない決断をするには普通なら相当な勇気が必要だと思う。もしこれら2曲がアルバムに収録されていれば、アルバムセールスはさらに伸びただろうし、ポールの最高傑作という評価にさえつながったかもしれない。結局アルバムの価値を決めるものは、大抵の場合収録曲の質の高さだからである。
アルバム・アウトテイクの数の多さ、そしてそれらの異常なまでのクオリティの高さという点では世界でポールの右に出る者はいないだろう。普通ボーナス・トラックとかアウトテイクといえば、ごく一部のマニアックなファン向けのサービスか、あるいはオマケ程度のものでしかない。しかしポールの場合は全く違う。ポールの場合、それらのクオリティはいわゆる「正規発売品」と同等であることが非常に多いばかりではなく、時に「正規品」を凌ぐことさえあるのである(いやこれホント)。
そして今回特に『ヴィーナス・アンド・マース』のボーナスディスクは充実している。上述の2曲以外にも、既発売曲としては『ランチ・ボックス/オッド・ソックス』『ウォーキング・イン・ザ・パーク・ウィズ・エロイーズ』『ブリッジ・オン・ザ・リヴァー・スイート』の3曲のインストゥルメンタル・ナンバーは埋もれさせておくにはもったいない佳曲だし、『マイ・カーニヴァル』も実に楽しい小品だ。それ以外にも掘り出し物があるかもしれないから、たとえボックスセットは買わずとも、やはり『ヴィーナス・アンド・マース』のリマスター盤は買いである。
さてさて『サリーG』に話を戻そう。
僕が初めてこの曲を聴いたのは高校生の頃で、購入したのはアナログのシングル盤(ドーナツ盤)だった。だがそれもリアルタイムではなく、おそらく3年から4年遅れで買ったのだと思う。当時はポールやウイングスに関する情報があまり、というかほとんどなかった。だから、このシングルがチャートで何位になったのかだとか、どんな評価がされたのか、などといった情報を全く知らない状況で毎日毎日このシングルを繰り返し聴いていたことを思い出す(情報過多は時に不幸をもたらすのだ)。
しかし当時から、僕はこのB面の『サリーG』という曲が大好きだった。その頃はこの曲がカントリー風だということさえ知らずに聴いていたものだが、とにかく曲の良さに惹かれたのだった。シングルのA面がいい曲というのは当たり前だったが、B面というのは地味でつまらない曲が多いというのが当時でも常識だったから、僕はとても得をしたような気分になっていたものだ。
言っておくが僕はカントリー・ミュージックが嫌いである(笑)。けっして頭から決めてかかるつもりはないのだが、ほぼ全く生理的に受け付けないのである。そんな僕がこの曲だけは昔から例外的に好きだというのは、やはり本格的なカントリー・ソングといえども、そこにはやはりポールならではの味付けというものがあるからなのだろうと思う。何をやらせても自分の手の内に入れて完璧にこなしてしまうポールの底力。これもまたマッカートニーマジックなのだろう。こういったいわばロックからはみ出た曲の数々(そしてポールにはとても多い)を好きになれるのならば、ポールの音楽はきっと一生の友となってくれるだろう。
バックにはカントリーの本場ナッシュビルでプロのミュージシャンを起用しただけあって、演奏はとてもすばらしいものとなっている。ポールのヴォーカルも円熟の極みである。
参考:
『NEW』コレクターズ・エディション(CD 国内盤)
『NEW』コレクターズ・エディション(CD 海外盤)
『ヴィーナス・アンド・マース』ボックスセット 日本盤
アマゾン
『ヴィーナス・アンド・マース』ボックスセット 海外盤
アマゾン 10/8現在未掲載/楽天ブックス 10/8現在未掲載/HMV
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