ポールの曲:『ディストラクションズ(Distractions)』
アルバム『フラワーズ・イン・ザ・ダート』収録。1989年発売。
『フラワーズ・イン・ザ・ダート』は1990年のソロ初来日公演の直前に発売されたアルバムであり、ファンにとっては非常に思い出深い作品である。日本公演と連動していたこともあり、僕も発売当時は数えきれないくらい繰り返し聴いたものである。
にもかかわらず『ディストラクションズ』という曲は僕にとっては長い間好きでも嫌いでもない、どちらかといえば中途半端な作品であり続けた。なかなかいい曲であることは認めるのだが、どちらかといえば退屈で、どうしても心の底から好きな曲とは言い切れない歯がゆさを感じていたのである。
そんな僕がこの曲のすばらしさに「突如として」気付いたのは、50才を過ぎたある日のことである。久しぶりにこの曲をヘッドフォンで、音量をやや大きめにして聴き始めたときにそれは起こった。イントロの演奏を聴いて鳥肌が立った。それは全く予期せぬ驚きだった。「すごい、これはこんなにもいい曲だったのか…。」
これだからポールファンはやめられない。長く付き合ってゆくと、思いがけず曲の評価が180度ひっくり返ってしまうことが本当によく起こるのである。ポールの音楽は世間一般に考えられているよりも遥かにバリエーション豊かで奥が深い。それは凡人の常識を超えている。たかが数回聴いただけで気に入らないからとお蔵入りになどしてしまうととんでもない宝を見逃すことになるから皆さんもお気をつけあれ。
さて50才を過ぎてようやくわかったこの曲のすばらしさ。うーん、渋い。そして心地良い。ちなみにポールがこの曲を発表したときの年齢が47才だから、僕が今までこの曲の本当の良さがわからなかったというのもなんとなく合点がいくのである。年齢と共に曲の好みも変わってゆくというのは確かにあることで、たとえば40才を過ぎてから僕はカーペンターズの『マスカレード(This Masquerade)』という曲が突然好きになったりしたのだが、その時と今回はなんとなく似ている気がしている。やはり僕もギンギンのロックよりも、しっとりと落ち着いた曲が年々好きになる傾向にあるようだ。
曲調はポールにしては珍しくジャズ&ボサノヴァの雰囲気がたっぷりだが、なんといってもクレア・フィッシャーなるアメリカ人アーティスト(兼作曲家、アレンジャー)によるオーケストラのアレンジと演奏が圧巻である。この味付けがなければこの曲の魅力はきっと半減したに違いない。(残念ながらクレア・フィッシャーは2012年に亡くなっている)
ポールのヴォーカルも低音からファルセットまでを駆使して聞きごたえ満点。そして、いかにもポールらしい滑らかなアコースティックギターの響きが曲に華を添えている。
ともかくポールが『キス・オン・ザ・ボトム』を発表する23年も前にこのような完成度の高いジャズテイストの曲を発表していたことは注目に値する。その音楽性の広さには改めて脱帽だ。
参考:
フラワーズ・イン・ザ・ダート(アマゾン・デジタルミュージック)
マスカレード(アマゾン・デジタルミュージック)
『フラワーズ・イン・ザ・ダート』は1990年のソロ初来日公演の直前に発売されたアルバムであり、ファンにとっては非常に思い出深い作品である。日本公演と連動していたこともあり、僕も発売当時は数えきれないくらい繰り返し聴いたものである。
にもかかわらず『ディストラクションズ』という曲は僕にとっては長い間好きでも嫌いでもない、どちらかといえば中途半端な作品であり続けた。なかなかいい曲であることは認めるのだが、どちらかといえば退屈で、どうしても心の底から好きな曲とは言い切れない歯がゆさを感じていたのである。
そんな僕がこの曲のすばらしさに「突如として」気付いたのは、50才を過ぎたある日のことである。久しぶりにこの曲をヘッドフォンで、音量をやや大きめにして聴き始めたときにそれは起こった。イントロの演奏を聴いて鳥肌が立った。それは全く予期せぬ驚きだった。「すごい、これはこんなにもいい曲だったのか…。」
これだからポールファンはやめられない。長く付き合ってゆくと、思いがけず曲の評価が180度ひっくり返ってしまうことが本当によく起こるのである。ポールの音楽は世間一般に考えられているよりも遥かにバリエーション豊かで奥が深い。それは凡人の常識を超えている。たかが数回聴いただけで気に入らないからとお蔵入りになどしてしまうととんでもない宝を見逃すことになるから皆さんもお気をつけあれ。
さて50才を過ぎてようやくわかったこの曲のすばらしさ。うーん、渋い。そして心地良い。ちなみにポールがこの曲を発表したときの年齢が47才だから、僕が今までこの曲の本当の良さがわからなかったというのもなんとなく合点がいくのである。年齢と共に曲の好みも変わってゆくというのは確かにあることで、たとえば40才を過ぎてから僕はカーペンターズの『マスカレード(This Masquerade)』という曲が突然好きになったりしたのだが、その時と今回はなんとなく似ている気がしている。やはり僕もギンギンのロックよりも、しっとりと落ち着いた曲が年々好きになる傾向にあるようだ。
曲調はポールにしては珍しくジャズ&ボサノヴァの雰囲気がたっぷりだが、なんといってもクレア・フィッシャーなるアメリカ人アーティスト(兼作曲家、アレンジャー)によるオーケストラのアレンジと演奏が圧巻である。この味付けがなければこの曲の魅力はきっと半減したに違いない。(残念ながらクレア・フィッシャーは2012年に亡くなっている)
ポールのヴォーカルも低音からファルセットまでを駆使して聞きごたえ満点。そして、いかにもポールらしい滑らかなアコースティックギターの響きが曲に華を添えている。
ともかくポールが『キス・オン・ザ・ボトム』を発表する23年も前にこのような完成度の高いジャズテイストの曲を発表していたことは注目に値する。その音楽性の広さには改めて脱帽だ。
参考:
フラワーズ・イン・ザ・ダート(アマゾン・デジタルミュージック)
マスカレード(アマゾン・デジタルミュージック)