真に歴史的だったグラミー賞と翌日のイベント
2014年1月26日に行なわれたグラミー賞の授賞式と、その翌日27日に行なわれた祝賀イベント『The Night That Changed America: A Grammy Salute to The Beatles(アメリカを変えた夜:グラミーよりビートルズに捧ぐ)』は真の意味で歴史的と呼べる出来事だったので、改めて記事として記録に残しておこうと思う。
大変残念なことに日本ではグラミー賞も、その翌日のイベントも共に有料チャンネルでしか放映されなかった。僕もそのどちらも完全版を観ることはできなかったのだが、幸いなことにユーチューブでその一部を見ることができ、改めてその重要性を認識し、これは記事にしておかなくてはと思い立ったしだい。特に『アメリカを変えた夜』は後世のためにもしっかりと残すべき超一級のイベントであったと思う(実は僕は最初このイベントを重要視していなかった。他のアーティストたちがビートルズの曲を演奏するただのトリビュートコンサートの類いだと思っていたのである)。
まずはグラミー賞の授賞式当日。この日ポールはリンゴと共に『クイーニー・アイ』を、リンゴはオールスターバンドと共に名曲『フォトグラフ』を披露した。この日のパフォーマンスはどちらも大変にすばらしいものだったが、期待されたポールとリンゴの共演は『クイーニー・アイ』の1曲のみ。僕を含め、多くのファンが大なり小なり物足りなさを感じたに違いない。だがポールとリンゴのミニ再結成は実はその翌日が本番であったことが明らかになる(これについては後述する)。
結局グラミー賞はポールが4部門を同時受賞という栄誉に輝き、ヨーコとオリヴィアは授賞式のプレゼンターとしても登壇して拍手喝采を浴びた。今やジョンとジョージの分身ともいえる2人がポール、リンゴと共に同じ場所に集まったことで、少なくともビートルズ4人の魂は再会を果たしたといえるのかもしれない。また授賞式の最前列にはヨーコさんと共にショーンの姿もあった(しかし、ヨーコさんは凄い!80才とは思えぬダンスとその存在感に僕は胸を打たれた)。
さて、グラミー賞の翌日に盛大に行なわれたイベントが『アメリカを変えた夜』である。これはビートルズのアメリカ上陸50周年を祝うイベントとして企画されたものであり、これに伴いビートルズはグラミー賞の「特別功労賞生涯業績賞」をその前日に受賞した。
今から遡ることちょうど50年前の1964年2月に、ビートルズがアメリカの人気番組『エド・サリヴァン・ショー』に出演し、「たった一夜にして」アメリカを変えたというのはけっして誇張でもなんでもないだろう。当時ビートルズがアメリカ社会に与えたインパクトはそれほど大きなものだった。
まずはポールの公式サイトより、ショーのスナップショットをご覧ください。
http://www.paulmccartney.com/the-collection/27750-a-grammy-salute-to-the-beatles
非常に印象的な写真ばかりである。なんとこれはファンのためというよりは、むしろビートルズが好きで集まったミュージシャンやセレブたちのお祭りといった趣ではないか。生きる伝説ポール・マッカートニーをひと目でもいいからこの目で見たい、できることなら近寄りたい、そしてもし可能であれば一緒に写真に写りたいなどと、きら星のごときスターたちがポールの周りに集合したという感じである。まさにミュージシャンの中のミュージシャン、スターの中のスター、生きながらにして伝説を作り続ける人、それが現在のポールなのである。
この世紀のショーのために、ビートルズを愛する多くのミュージシャンたちがビートルズの曲をカバー演奏した。デイヴ・グロール、ジェフ・リン、スティーヴィー・ワンダー、ジョー・ウォルシュなどおなじみの面々に混じって、比較的若いミュージシャンたちも次々とビートルズ・ナンバーを演奏する。だが僕がとりわけ感心したのはむしろ僕が名前も知らなかったミュージシャンたちがオリジナルの良さを損なうことなく、すばらしい歌と演奏を披露していたことだった。最近のミュージシャンも捨てたものではないなと。
演奏曲目とミュージシャンは以下の通り(ウィキペディア英語版より)
"All My Loving", "Ticket to Ride" by Maroon 5
"We Can Work It Out" by Stevie Wonder
"Something" by Dhani Harrison, Jeff Lynne and Joe Walsh
"In My Life" by Ed Sheeran
"Don't Let Me Down" by John Mayer and Keith Urban
"Yesterday" by Katy Perry
"Revolution" by Imagine Dragons
"Hey Bulldog" by Dave Grohl and Jeff Lynne
"The Fool on the Hill" by Eurythmics
"Let It Be" by John Legend and Alicia Keys
"Here Comes the Sun" by Brad Paisley and Pharrell Williams
"While My Guitar Gently Weeps" by Gary Clark, Jr., Dave Grohl and Joe Walsh
"Matchbox", "Boys", "Yellow Submarine" by Ringo Starr
"Birthday", "Get Back", "I Saw Her Standing There", "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" by Paul McCartney
"With A Little Help From My Friends", "Hey Jude" by Paul McCartney and Ringo Starr
しかし『ヘイ・ブルドッグ』はぜひポールにも参加してもらい、あの強烈なベースプレイとワイルドなヴォーカルを再現してもらいたかった。せっかくのチャンスだったのに残念である。
ジョージの息子ダーニが参加した『サムシング』もよかった。彼はそのルックスのおかげでただギターを弾いているだけで絵になってしまう。それはまるで若き日のジョージが生きてそこにいるかのようだった。
そしていよいよ真打ち登場。リンゴがオールスターバンドと共に『マッチボックス』『ボーイズ』『イエロー・サブマリン』を演奏し、続いてポールが彼のバンドと共に『バースデイ』『ゲット・バック』『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』を演奏。ショーの盛り上がりは最高潮を迎える。
そしてそして、ついに待っていた瞬間がやってきた。ポールが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を演奏すると、リンゴがステージに飛び入りし、ポールと肩を並べて『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』を歌い始めたのだ!もうこれで盛り上がらないわけがない。まずは主役はリンゴに任せて、ポールはコーラスで脇役に回る。完璧な歌と演奏だ。
そして最後は『ヘイ・ジュード』。リンゴのドラムをバックにポールがこの曲を歌うという、まずはこの絵づらだけで僕は大感動してしまう。長い間このときを待っていたのだ。そしてポールはただそこにリンゴがいるというだけで、僕にはやはりいつものポールとは違って見えたし、違って聞こえた。この日のポールのパフォーマンスは特別だったと思う。またツアーから離れているせいで、ポールの声にも艶が戻っているように感じられた。
『アメリカを変えた夜』は映像作品としてその完全版が近いうちに発売されることを期待したい。
ポールとリンゴが今も元気で、こうしてすばらしい歌と、演奏と、幸せを僕たちに運んでくれることにただひたすら感謝である。今や彼らは何ものにも代え難い人類の宝なのだ。未来の人たちは僕たちのことをきっと羨ましく思うことだろう。
ブラボー、ポール&リンゴ!
大変残念なことに日本ではグラミー賞も、その翌日のイベントも共に有料チャンネルでしか放映されなかった。僕もそのどちらも完全版を観ることはできなかったのだが、幸いなことにユーチューブでその一部を見ることができ、改めてその重要性を認識し、これは記事にしておかなくてはと思い立ったしだい。特に『アメリカを変えた夜』は後世のためにもしっかりと残すべき超一級のイベントであったと思う(実は僕は最初このイベントを重要視していなかった。他のアーティストたちがビートルズの曲を演奏するただのトリビュートコンサートの類いだと思っていたのである)。
まずはグラミー賞の授賞式当日。この日ポールはリンゴと共に『クイーニー・アイ』を、リンゴはオールスターバンドと共に名曲『フォトグラフ』を披露した。この日のパフォーマンスはどちらも大変にすばらしいものだったが、期待されたポールとリンゴの共演は『クイーニー・アイ』の1曲のみ。僕を含め、多くのファンが大なり小なり物足りなさを感じたに違いない。だがポールとリンゴのミニ再結成は実はその翌日が本番であったことが明らかになる(これについては後述する)。
結局グラミー賞はポールが4部門を同時受賞という栄誉に輝き、ヨーコとオリヴィアは授賞式のプレゼンターとしても登壇して拍手喝采を浴びた。今やジョンとジョージの分身ともいえる2人がポール、リンゴと共に同じ場所に集まったことで、少なくともビートルズ4人の魂は再会を果たしたといえるのかもしれない。また授賞式の最前列にはヨーコさんと共にショーンの姿もあった(しかし、ヨーコさんは凄い!80才とは思えぬダンスとその存在感に僕は胸を打たれた)。
さて、グラミー賞の翌日に盛大に行なわれたイベントが『アメリカを変えた夜』である。これはビートルズのアメリカ上陸50周年を祝うイベントとして企画されたものであり、これに伴いビートルズはグラミー賞の「特別功労賞生涯業績賞」をその前日に受賞した。
今から遡ることちょうど50年前の1964年2月に、ビートルズがアメリカの人気番組『エド・サリヴァン・ショー』に出演し、「たった一夜にして」アメリカを変えたというのはけっして誇張でもなんでもないだろう。当時ビートルズがアメリカ社会に与えたインパクトはそれほど大きなものだった。
まずはポールの公式サイトより、ショーのスナップショットをご覧ください。
http://www.paulmccartney.com/the-collection/27750-a-grammy-salute-to-the-beatles
非常に印象的な写真ばかりである。なんとこれはファンのためというよりは、むしろビートルズが好きで集まったミュージシャンやセレブたちのお祭りといった趣ではないか。生きる伝説ポール・マッカートニーをひと目でもいいからこの目で見たい、できることなら近寄りたい、そしてもし可能であれば一緒に写真に写りたいなどと、きら星のごときスターたちがポールの周りに集合したという感じである。まさにミュージシャンの中のミュージシャン、スターの中のスター、生きながらにして伝説を作り続ける人、それが現在のポールなのである。
この世紀のショーのために、ビートルズを愛する多くのミュージシャンたちがビートルズの曲をカバー演奏した。デイヴ・グロール、ジェフ・リン、スティーヴィー・ワンダー、ジョー・ウォルシュなどおなじみの面々に混じって、比較的若いミュージシャンたちも次々とビートルズ・ナンバーを演奏する。だが僕がとりわけ感心したのはむしろ僕が名前も知らなかったミュージシャンたちがオリジナルの良さを損なうことなく、すばらしい歌と演奏を披露していたことだった。最近のミュージシャンも捨てたものではないなと。
演奏曲目とミュージシャンは以下の通り(ウィキペディア英語版より)
"All My Loving", "Ticket to Ride" by Maroon 5
"We Can Work It Out" by Stevie Wonder
"Something" by Dhani Harrison, Jeff Lynne and Joe Walsh
"In My Life" by Ed Sheeran
"Don't Let Me Down" by John Mayer and Keith Urban
"Yesterday" by Katy Perry
"Revolution" by Imagine Dragons
"Hey Bulldog" by Dave Grohl and Jeff Lynne
"The Fool on the Hill" by Eurythmics
"Let It Be" by John Legend and Alicia Keys
"Here Comes the Sun" by Brad Paisley and Pharrell Williams
"While My Guitar Gently Weeps" by Gary Clark, Jr., Dave Grohl and Joe Walsh
"Matchbox", "Boys", "Yellow Submarine" by Ringo Starr
"Birthday", "Get Back", "I Saw Her Standing There", "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" by Paul McCartney
"With A Little Help From My Friends", "Hey Jude" by Paul McCartney and Ringo Starr
しかし『ヘイ・ブルドッグ』はぜひポールにも参加してもらい、あの強烈なベースプレイとワイルドなヴォーカルを再現してもらいたかった。せっかくのチャンスだったのに残念である。
ジョージの息子ダーニが参加した『サムシング』もよかった。彼はそのルックスのおかげでただギターを弾いているだけで絵になってしまう。それはまるで若き日のジョージが生きてそこにいるかのようだった。
そしていよいよ真打ち登場。リンゴがオールスターバンドと共に『マッチボックス』『ボーイズ』『イエロー・サブマリン』を演奏し、続いてポールが彼のバンドと共に『バースデイ』『ゲット・バック』『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』を演奏。ショーの盛り上がりは最高潮を迎える。
そしてそして、ついに待っていた瞬間がやってきた。ポールが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を演奏すると、リンゴがステージに飛び入りし、ポールと肩を並べて『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』を歌い始めたのだ!もうこれで盛り上がらないわけがない。まずは主役はリンゴに任せて、ポールはコーラスで脇役に回る。完璧な歌と演奏だ。
そして最後は『ヘイ・ジュード』。リンゴのドラムをバックにポールがこの曲を歌うという、まずはこの絵づらだけで僕は大感動してしまう。長い間このときを待っていたのだ。そしてポールはただそこにリンゴがいるというだけで、僕にはやはりいつものポールとは違って見えたし、違って聞こえた。この日のポールのパフォーマンスは特別だったと思う。またツアーから離れているせいで、ポールの声にも艶が戻っているように感じられた。
『アメリカを変えた夜』は映像作品としてその完全版が近いうちに発売されることを期待したい。
ポールとリンゴが今も元気で、こうしてすばらしい歌と、演奏と、幸せを僕たちに運んでくれることにただひたすら感謝である。今や彼らは何ものにも代え難い人類の宝なのだ。未来の人たちは僕たちのことをきっと羨ましく思うことだろう。
ブラボー、ポール&リンゴ!
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