ソロ・リマスター日記 - 34 まだまだ『ラム』リマスター その③
『ラム』リマスター・ボーナスディスクの収録曲は全8曲。収録時間は33分6秒と1枚のアルバムとしては若干短いと言えるが、過去記事でもお伝えした通り、僕個人はこれをボーナスディスクではなく事実上『ラム』のディスク2と位置付けている。というのも、今回のボーナスディスクは過去3枚のアーカイブ・コレクションとは比較にならないくらいレベルの高い楽曲で占められているからだ。しかも実際にレコーディングされた時期を見ても、今回はただの1曲の例外もなく1970年10月から1971年2月にかけて行われたニューヨークでの『ラム』レコーディング・セッションからのものとなっている。つまり『ラム』と全く同時期に、同じミュージシャンたちによって録音された作品ということになるのである。
1.『アナザー・デイ』
いうまでもなくポールの記念すべきソロ第1弾シングルであるが、僕はつい最近までこの曲がファースト・アルバム『マッカートニー』と同時期に録音されたものだと思い込んでいた。というのも、まさかポールの“ソロ第1弾シングル”の発売が『ラム』の発売直前までなかったなどとは思いもしなかったからである。だが実際にはこの曲は1970年10月の『ラム』レコーディング・セッションで録音され、翌1971年2月にシングルとしてリリースされた。つまりポールは『恋することのもどかしさ』のような強力なシングル候補曲が存在したにもかかわらず、シングル盤の発売についてはじっとその発売のタイミングをうかがっていたようなところがあるのだ。
そして実際シングル曲として選ばれたこの『アナザー・デイ』はまさにファンの期待を裏切らないポールらしいポップチューンだった。A面の『アナザー・デイ』のギターはデヴィッド・スピノザ、B面の『オー・ウーマン、オー・ホワイ』ではヒュー・マクラッケンがギターを弾いている。
『ラム』は一般にヒュー・マクラッケンとデヴィッド・スピノザの2名のセッション・ギタリストが参加したアルバムとされているが、実際に2人が同時にレコーディングに参加して録音された曲というのは実は1曲もない。また、ほとんどの曲でギターを弾いているのはヒュー・マクラッケンのほうである(ということを僕も今回初めて知った、笑)。ちなみにデヴィッド・スピノザがギターで参加した曲は『アナザー・デイ』『3本足』『イート・アット・ホーム』の3曲だけである。こう考えるとマクラッケンの『ラム』における貢献度は大変なものがある。まさにプロの仕事といえるだろう。
2.『オー・ウーマン、オー・ホワイ』
ポップな『アナザー・デイ』との対比が見事なカップリング曲。曲については過去記事参照。ポールの曲: 『オー・ウーマン、オー・ホワイ(Oh Woman, Oh Why)』
3.『リトル・ウーマン・ラヴ』
オリジナルはウイングス2枚目のシングルとして1972年5月に『メアリーの子羊』のB面として発表された。アナログ時代はシングル発売のみで、しかもB面ということで当時この曲の存在を知る人はとても少なかったことを覚えている(僕もアナログのシングル盤は持っていた)。隠れた名曲と言いたいところだが、正直そこまでの重みはない。まるでポールが即興で作ってしまったかのような軽いタッチの作品である。
4.『ア・ラヴ・フォー・ユー』
『ラム』のレコーディング・セッションで録音された曲だが、その後お蔵入りとなり、2003年のアメリカ映画『セイブ・ザ・ワールド』の主題歌として初めて日の目を見た作品。それまでにも海賊盤ではその存在は知られていたが、映画自体があまりヒットせず、ポールの公式作品にも含まれていなかったために、長い間埋もれたような形になっていた。今回収録されたのは「ジョン・ケリー・ミックス」という但し書きが付けられており映画で使われたものとは別ヴァージョンである。個人的には映画ヴァージョンよりはこちらのほうが声のピッチも自然でまとまりがよいと思うがどうだろうか。今後従来の映画ヴァージョン、またはそれ以外のヴァージョンが出てくるかどうかは不明である。
曲自体はポールでなければ書けないようなメロディと、ドキッとするような展開を合わせ持ったなかなかの名曲だと思う。だが、いかんせん曲の良さが今一つ生かし切れていないという印象は否めない。アレンジや曲の料理の仕方しだいでシングル候補にさえなり得る曲と思えるだけに、非常に残念な気がしてしまうのである。ビートルズ・アンソロジーでは『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』や『ヘルター・スケルター』のような名曲でさえもがデモの段階でいかに平凡に聴こえたかを僕は思いだしていた。あのジョージ・マーティンならいったいどんな風にこの曲を仕上げたであろうか?きっと分厚いアレンジで聴きごたえのある曲にしたのではないか、などとシロウトなりに思いを巡らせたりしたのである。(続く)
参考:
『ラム』リマスター日本盤
スーパー・デラックス・エディション
(4CD+DVD)
デラックス・エディション
(2CD)
『ラム』リマスター海外盤
デラックス・エディション・ボックス・セット
(4CD+DVD)
スペシャル・エディション
(2CD)
1.『アナザー・デイ』
いうまでもなくポールの記念すべきソロ第1弾シングルであるが、僕はつい最近までこの曲がファースト・アルバム『マッカートニー』と同時期に録音されたものだと思い込んでいた。というのも、まさかポールの“ソロ第1弾シングル”の発売が『ラム』の発売直前までなかったなどとは思いもしなかったからである。だが実際にはこの曲は1970年10月の『ラム』レコーディング・セッションで録音され、翌1971年2月にシングルとしてリリースされた。つまりポールは『恋することのもどかしさ』のような強力なシングル候補曲が存在したにもかかわらず、シングル盤の発売についてはじっとその発売のタイミングをうかがっていたようなところがあるのだ。
そして実際シングル曲として選ばれたこの『アナザー・デイ』はまさにファンの期待を裏切らないポールらしいポップチューンだった。A面の『アナザー・デイ』のギターはデヴィッド・スピノザ、B面の『オー・ウーマン、オー・ホワイ』ではヒュー・マクラッケンがギターを弾いている。
『ラム』は一般にヒュー・マクラッケンとデヴィッド・スピノザの2名のセッション・ギタリストが参加したアルバムとされているが、実際に2人が同時にレコーディングに参加して録音された曲というのは実は1曲もない。また、ほとんどの曲でギターを弾いているのはヒュー・マクラッケンのほうである(ということを僕も今回初めて知った、笑)。ちなみにデヴィッド・スピノザがギターで参加した曲は『アナザー・デイ』『3本足』『イート・アット・ホーム』の3曲だけである。こう考えるとマクラッケンの『ラム』における貢献度は大変なものがある。まさにプロの仕事といえるだろう。
2.『オー・ウーマン、オー・ホワイ』
ポップな『アナザー・デイ』との対比が見事なカップリング曲。曲については過去記事参照。ポールの曲: 『オー・ウーマン、オー・ホワイ(Oh Woman, Oh Why)』
3.『リトル・ウーマン・ラヴ』
オリジナルはウイングス2枚目のシングルとして1972年5月に『メアリーの子羊』のB面として発表された。アナログ時代はシングル発売のみで、しかもB面ということで当時この曲の存在を知る人はとても少なかったことを覚えている(僕もアナログのシングル盤は持っていた)。隠れた名曲と言いたいところだが、正直そこまでの重みはない。まるでポールが即興で作ってしまったかのような軽いタッチの作品である。
4.『ア・ラヴ・フォー・ユー』
『ラム』のレコーディング・セッションで録音された曲だが、その後お蔵入りとなり、2003年のアメリカ映画『セイブ・ザ・ワールド』の主題歌として初めて日の目を見た作品。それまでにも海賊盤ではその存在は知られていたが、映画自体があまりヒットせず、ポールの公式作品にも含まれていなかったために、長い間埋もれたような形になっていた。今回収録されたのは「ジョン・ケリー・ミックス」という但し書きが付けられており映画で使われたものとは別ヴァージョンである。個人的には映画ヴァージョンよりはこちらのほうが声のピッチも自然でまとまりがよいと思うがどうだろうか。今後従来の映画ヴァージョン、またはそれ以外のヴァージョンが出てくるかどうかは不明である。
曲自体はポールでなければ書けないようなメロディと、ドキッとするような展開を合わせ持ったなかなかの名曲だと思う。だが、いかんせん曲の良さが今一つ生かし切れていないという印象は否めない。アレンジや曲の料理の仕方しだいでシングル候補にさえなり得る曲と思えるだけに、非常に残念な気がしてしまうのである。ビートルズ・アンソロジーでは『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』や『ヘルター・スケルター』のような名曲でさえもがデモの段階でいかに平凡に聴こえたかを僕は思いだしていた。あのジョージ・マーティンならいったいどんな風にこの曲を仕上げたであろうか?きっと分厚いアレンジで聴きごたえのある曲にしたのではないか、などとシロウトなりに思いを巡らせたりしたのである。(続く)
参考:
『ラム』リマスター日本盤
スーパー・デラックス・エディション
デラックス・エディション
『ラム』リマスター海外盤
デラックス・エディション・ボックス・セット
スペシャル・エディション
2012-08-28 │ ソロ・リマスター日記 │ Edit