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ポールのアルバム “Band on the Run(バンド・オン・ザ・ラン)”

ポールの数多いソロアルバムの中で最高傑作は何か?たった一枚だけを挙げるとすれば、ファンの間でもその意見は様々に分かれることだろう。だが、最高傑作か否かは別にして、アルバム“Band on the Run”がポールの全ソロキャリアの中で極めて重要な位置を占める作品であることに異議を唱えるファンはいないと思う。

今では信じられないことだが、ビートルズが解散してからの数年間、ポールのソロ作品に対する評価は不当に低いものであった。(実体験として語れないのがつらいところだが、僕がポール(ウイングス)のソロ作品を聴き始めた1970年代後半でさえ、ポールに対する不当な評価は常についてまわっていたものだ)

ビートルズ解散後のソロもしくはウイングス名義での4作、“McCartney”、“Ram”、“Wings Wild Life”、“Red Rose Speedway”。これらの作品は今聴いてもそれぞれに特色を持ったなかなかいいアルバムと思うのだが、当時の批評家連中の評価は散々なものであった。ジョンが“Plastic Ono Band(ジョンの魂)”と“Imagine”で、ジョージが“All Things Must Pass”でビートルズに匹敵する評価を既に確立していたのに比べ、ポールの作る音楽は常に散漫で、安っぽいという印象を与えていたのだった。簡単に言えば、ビートルズの作品に流れていた芸術性、そして独特の空気感がポールの作品には欠けていたと思われていたのである。そのあたりの比較論はポールびいきの僕でも全く理解できないわけではないが…。たしかに、そういった意味ではジョンとジョージの前述の作品は傑作であったと思う。

ともかく当時のポールは表向きには順調にヒットを飛ばしつつも、やはりビートルズに匹敵するような歴史的価値のある作品を世に送り出すという使命を背負わされていた、そんな時代であったといえるだろう。逆にいえば、それだけポールが期待されていたことの証しでもある。そして…ビートルズ解散から3年という時を経て、ついにポールはそれをやり遂げるのである。

アルバム“Band on the Run”は1973年の12月に発売された。

このアルバムの完成度の高さ。それは、独論になってしまうがアルバム全編に流れる「異様なまでのビートルズ的な空気感」に尽きる。これを言葉で言い表すことは難しい。ビートルズの作品がどの時代のどんなアーティストとも決定的に違っているのは、それらの作品が録音された瞬間の「異様なまでの空気感」にあると僕は思っている。それは音なき音といってもいいだろうが、まるでそこに神が息づいてでもいるかのような一種独特の“何か”がビートルズの作品全般には流れている。あえてオカルト的な表現をするならば、そこには明らかに神か仏か、はたまた天使か、ともかく何やら得体のしれない存在が降臨しているようさえに思えるのである。ゆえにビートルズの音楽は絶対に再現不可能であり、ビートルズ・ミュージックは人知を超えているのだ。

そして、そこに神の力が働いていたかどうかはともかく、ポールが突如としてその類い稀なる才能を“Band on the Run”で再び世に示したのは紛れもない事実である。このアルバムはアンチポールの人々でさえも黙らせるほどの絶対的な魔力を持っていた。そして、その魔力は発売から35年を経た今もなお健在である。

全くタイプの違う全9曲。それらが一本ピンと筋の通った見事な統一感を示している。どの曲を聴いても見事な楽曲、見事な演奏、見事なアレンジ、そしてヴォーカル。各曲が驚異的に高いレベルで作り込まれている。シンプルで、かつ奥行きのあるサウンドはまさにビートルズを彷彿とさせる。

ビートルズ解散から38年という年月が過ぎ去った現在も、ポールは依然として音楽界の重鎮として第一線で大活躍を続けている。特にここ10年ほどの活躍には目を見張るものがある。しかし、総合的に見てこの“Band on the Run”を超えるアルバムをポールが作れたかというと、どうだろうか…。僕個人としては唯一“Chaos and Creation in the Backyard”が“Band on the Run”に肉薄するアルバムと思っているが、これを超える作品となると、残念ながら未だ出現してはいないというのが正直な感想である。

このアルバムは、そのレコーディングの直前にギタリストとドラマーの2人がグループ(ウイングス)を脱退したことでも有名である。つまり、ポールはリンダ、デニーレインと共にたった3人で、しかもレコーディング環境の劣悪なアフリカ(ナイジェリアのラゴス)でこのアルバムを制作しなくてはならなかった。しかし、このアルバムの成功は、決してこれらの悪い条件なしには為し遂げ得なかったであろうと思われるのだ。
ポールが逆境になればなるほど力を発揮するアーティストであることは、今や僕たちファンの間では通説になっている。ビートルズ解散、ジョンの死、リンダの死、ヘザーとの離婚などなど、普通ならば落ち込んで何も手がつかなくなるような状況に陥れば陥るほど、ポールの創作能力は異常なまでの輝きを放ってきた。このアルバムについても、レコーディング直前に発生した予期せぬマイナス要因、そして障害の数々がポールの創造性に火をつけたことは間違いないだろう。

このアルバムのもう一つの成功要因。それはバンドメンバーの欠員により、必然的にポールがほとんどすべての楽器を演奏しなくてはならなくなったことだ。
真の芸術に妥協は不要である。ポールがバンドを民主的に運営しようとすればするほど、それは天才アーティスト、ポール・マッカートニーにとっての堕落を意味した。ウイングスのアルバムの多くにみられる散漫で生ぬるい感覚は、実はポールがバンドのメンバーたちにある種の自由を許していたことが原因ではなかったろうか。

ポール自らがベース以外にギターや、ドラムスティックさえをもを手にしたその瞬間、その作品はポール・マッカートニーという歴史上稀有なる音楽家の芸術作品となる。このときテクニックはさほど問題とはならない。超絶技巧を必要とする作品というのは、実はそれほど多くはないからだ。
要は全体としての音楽を紡ぎあげるセンスの問題なのだ。タイトルチューンの“Band on the Run”でポールが叩くドラムスの音に耳を傾けてみてほしい。素人の僕が聴いてもお世辞にも技術的にうまいとは思えない、がしかし、なんともいえない味があり、聴いていてとても心地よいのである。そして、サウンド全体として聴けば絶妙なバランスが取れている。これこそ匠の技、天才のなせる技だと思う。

たしかにデニーやリンダの協力なくしてこのアルバムは完成しなかったろうが、どちらかといえば、これはもう一つのポールのソロアルバムだと僕個人は思っている。実は“Band on the Run”は“McCartney”、“Ram”に続くポールのソロアルバムだったのだ。


好きな曲ベスト5
1.“1985”
最終的に大ヒット曲2曲を押しのけて最も好きな曲に残った。曲、アレンジ、演奏、ヴォーカル、そのすべてがすばらしい名曲中の名曲である。

2.“Band on the Run”
別々の曲を3曲リンクさせてしまったような職人芸もさることながら、ポールならではの天賦のセンスを十二分に感じさせるポールソロ期の代名詞的ナンバー。

3.“No Words”
デニー・レインとの共作による小品という印象だが、何度聴いてもその美しいメロディーにしばし聴き惚れてしまう…。

4.“Jet”
やはりスタジオヴァージョンが最高だが、ライブには欠かせぬ定番であり、また異常に盛り上がる曲でもある。

5.“Mrs. Vandebilt”
このドライブ感、この切れ味、このノリのよさ。ただ一言、「て・ん・さ・い・だ!」

参考:
Band on the Run
Chaos and Creation in the Backyard
Plastic Ono Band
Imagine
All Things Must Pass


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