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The Capitol Albums, Vol. 1

ビートルズを聴き始めた中学生の頃、お金がなかった僕は、月にアルバム(当時はLP)を1枚買うのが精一杯だった。本当に金欠の時には、シングル盤1枚だけを買い、それだけを聴いて1ヶ月を過ごすこともけっこうあった。
そんな貧乏学生の頃は、ビートルズのアルバムがずらっと並べられたカタログを見て、あれも欲しい、これも欲しいなどと思いを巡らしたものである。

その頃はあまり深く考えたことはなかったのだが、当時のビートルズのレコードカタログには、イギリスのオリジナル・アルバム以外に、アメリカ編集盤や日本編集盤というアルバムがかなりたくさん載っていた。
お金がなかった僕にしてみれば、イギリスのオリジナル盤以外には浮気をする余裕すらなかったのだが、今になって考えると、この編集盤というやつが、かなりクセモノであったということがわかる。

当時はまだまだレコード会社がアーティストに対して強い権力をふるっていた時代であったことがうかがえる。
なぜなら、ビートルズでさえも、“Sgt. Pepper's”以前は、レコード会社の手によってアルバムの曲順を好き勝手に変えられたり、場合によっては収録曲さえも差し替えられた上に、堂々と発売されていたのだから。
まさに作る側の意思やコンセプトなどは完全に踏みにじられていた時代であった。
現在の状況から考えると信じ難いことに思えるが、これは歴史的な事実である。

そういえば、当時からアメリカのキャピトル・レコードの評判が芳しくなかったのをこの年になって、なるほどしみじみと理解したりするのだった…。ビートルズも大変だったのだ。
ともかく、ビートルズのとてつもない成功が、アーティストの権利向上に大きな役割を果たしたことだけは確かだろう。それは同時に、“Sgt. Pepper's”が一つの芸術作品として世間に認知されたことをも意味している。
さすがのキャピトルも、このアルバムをいじることだけはできなかったのだと思う。そして、そうならなくて本当によかった。

この悪しき歴史の遺物ともいえるキャピトル盤であるが、いちおうビートルズ作品のCD化と共に、この世から姿を消したかに思われた。(つまり廃盤)
しかし、そこは商魂たくましいキャピトルである。
最近になってアメリカ編集盤を4枚づつ組み合わせ、ここに復刻させてしまったというわけである。
その名も“The Capitol Albums, Vol.1
金になることなら何でもやる。ある意味まさにアメリカらしい企画版ではないか。

とまあ、ずいぶんと悪口ばかりを書きつらねてしまったが、この復刻版が全く意味がないのかといえば、実はそうでもない。
僕などは、むしろ“LOVE”などより、よほど価値があると思っているくらいだ。
というのも、僕がイギリス・オリジナル盤CDで気に入らないことが一つだけあるのだ。
それは、ビートルズ初期のアルバムがモノラル盤しかないことだ。

たとえば、僕が学生の頃に買ったアナログ盤の“Please Please Me”はステレオ・バージョンだった。
今から考えると、正確には擬似ステレオだったのかもしれないが、当時からボーカルと演奏が左右のチャンネルにはっきりと分かれていた。そして、左右のスピーカーからダイレクトに聴こえる音は安物のステレオであっても、驚くほどリアルだった。
僕はそんなアナログ盤の音が大好きだったのだ。

きっとそんな原体験があるからなのだろう。それがどんなにオリジナルに忠実なビートルズの音だと言われても、僕はいまだにモノラル盤が好きになれないのである。

その点、今回のキャピトル盤は、ごていねいにもステレオ版とモノラル版の両方が各CDに収録されている。そして当然僕の目当てはステレオ版である。
これまでCDではモノラルでしか聴けなかった初期の曲が、このCDセットを買うことでかなりたくさん聴ける。これは本当に嬉しいことだ。
たしかにリミックスの質自体が悪かったり、微妙にバランスの悪い曲もあるが、総じて音は良くなったという印象である。

収録されているCDは以下の4枚。
“Meet the Beatles”
“The Beatles Second Album”
“Something New”
“Beatles '65”

僕のように、“ステレオのビートルズ”にこだわりがある人は、きっと買って損のないセットだと思う。
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