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1日1枚シリーズ その2 『ラム』を聴く

1枚のアルバムを最初から最後までぶっ通しで聴いてみて感想を書いてみようという、まったくの思いつきで始めたこのシリーズ。その第2弾は、もちろん『ラム』である(ただの時系列、笑)。

その昔、僕が若かりし頃は、アルバムを最初から最後までぶっ通しで聴くなんて、とても当たり前のことだった。と言うよりは、昔のアナログレコードは、表裏(A面とB面)に分かれていたから、A面・B面共に一度針を落としたならわずか20分前後で片面が終わってしまうという仕様だった。だから、少なくともA面か、B面は始めから終わりまで聴くというのがごく普通の聴き方だったのだ。それに、今のように曲をワンクリックで瞬間的にすっ飛ばす、なんてこともできなかった。曲を飛ばして聴くにはいったん針をレコードから手動で離し、さらにお目当ての曲の溝(ミゾ)を探し当てて静かに針を落とす、という作業をしなくてはならなかったのだ。だから、そんな面倒くさいことをするよりは、一度針を落としたら片面が終わるまでそのまま聴き続けるほうが効率的でもあったわけだ。

そんなわけで、昔はあまり好きでもない曲でも、そのまま聴き続けることが多かったように思う。ある意味アーティストにとっても有難い時代だったのかもしれない。好きなアーティストのアルバムは好きな曲も、そうでない曲もとにかく目一杯に楽しむ・・・それが古き良きアナログレコードの時代だった。

ということで、『ラム』である。
前作『マッカートニー』のリリースからわずか1年1か月後の1971年5月にこのアルバムは発売された。今さらながら、そのアルバム制作サイクルの短さには驚かされるばかりだが、それにも増して驚かされるのがとても人間技とは思えない曲想の豊かさである。どうしたら約1年という短い時間の間にこれだけバラエティに富んだ曲の数々を作り、詩を付け、アレンジを施し、レコーディングまで完成させることができたのか・・・。単純計算だと、アルバム12曲+シングル2曲=14曲だから、月に1〜2曲仕上げればいいということになるのだろうが、何もないところから1曲を生み出すことのいかに困難であるかを想像するにつけ、凡人の僕はただただ途方に暮れてしまうことになる。

なにしろほとんどの人間は一生のうちただの1曲として音楽を作ることなく人生を終えるのである。そして音楽を作る才能を持ったほんの一握りの人たちでさえ、いわゆる世界的な名曲をたった1曲でも残すことができれば極めて幸運であり、それ以外のほとんどの人たちは大衆に全く知られることのないままこの世から消えてゆく。それが厳しい現実である。

だがポール・マッカートニーは既に1971年の時点で少なくとも50曲以上の世界的名曲を作曲、もしくは共作していた。もちろん僕はビートルズの事を言っているのだが、普通ならば1人の人間が生み出せるキャパシティはこの時点でとっくの昔に超えていたはずなのである。つまり俗に言う「才能の枯渇」にポールが苦しんでいても何の不思議もなかったはずなのだ。だが、そうはならなかった。それどころか多作かつ良作という奇跡的な状態がビートルズ解散以降も途切れることなく続いていたのだから驚きである。

とにかくアルバム全編を通して印象的で、美しいメロディが詰まっている。また似たような曲が1曲もないため何度聴いてもけっして飽きることがないし、アレンジや演奏に関してもまったく隙がない。前作『マッカートニー』とは力の入り方が明らかに違う。1枚のアルバムとして統一感のある非常に完成度の高い作品になっている。ゆえにこれはもう古典と呼んでもよいほどの名盤といえるだろう。

ビートルズ解散によるショックから、アルバム『マッカートニー』から『ラム』の頃のポールは精神的に非常に不安定であったと言われている。今ではとても信じられないことだが、酒に浸り、ドラッグにまで手を出したことさえあったという。そんなポールを陰からしっかりと支え、作品にまで共作者としてクレジットされているのが(当時音楽的にはまったくの素人だった)妻のリンダであった。アルバム『ラム』ではなんと12曲中6曲が「Paul & Linda McCartney」とはっきりクレジットされているのだから驚きである。リンダからの音楽面での実際的な助力は、おそらく微々たるものではなかったかと僕は推測しているのだが、この頃のポールは傍らにリンダがいなければとても作曲などできるような状況ではなかったのではあるまいか、そして、それゆえにポールはリンダを共作者として世間に声高に宣言したかったのではないか(リンダへの感謝の気持ちを込めて)、と僕は思っている。

リンダの存在なくして、この名盤はけっして生まれ得なかったのである。ありがとう、リンダ。

アルバム『ラム』はポールの約60年間に渡る音楽キャリア全体を見渡しても、最も評価の高いアルバムの一つである。特にソロ期においては、このアルバムと比較しうる作品は『バンド・オン・ザ・ラン』『ヴィーナス・アンド・マース』『ロンドン・タウン』『タッグ・オブ・ウォー』『フレイミング・パイ』『ケイオス・アンド・クリエーション・イン・ザ・バックヤード』『NEW』ぐらいしかなかろう、と僕個人は思っている。ほんとうにすばらしいアルバムだ。

僕がアルバム『ラム』を聴いて感じる言葉は「メロディーの宝石箱」である。

最後にこのアルバムで僕が「いい曲」と思う曲を挙げておく。

Too Many People
Dear Boy
Uncle Albert/Admiral Halsay
Monkberry Moon Delight
Eat at Home
The Back Seat of My Car

『Ram』[CD]

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