『エジプト・ステーション』雑談的レビュー その4
6.Who Cares/フー・ケアーズ
『ハッピー・ウィズ・ユー』に引き続き印象的なギターリフが心地良い、いかにもポールらしい軽快なロックナンバー。
てっきりポールがほぼ一人ですべての楽器を担当しているのかと思いきや、参加ミュージシャンのクレジットを見てびっくりした。単純にポール・マッカートニー・バンド5人だけの演奏だったからだ。ポールが担当しているのはヴォーカル、ベース、アコースティックギターのみで、あとはバンドの各メンバーがそれぞれのパートの楽器を担当している。
思えば、現在のバンドメンバーとのデビューアルバムは約17年前に発表された『ドライヴィング・レイン』にまで遡る。新しいバンドメンバーたちとライヴ演奏に近い感覚で録音されたこのアルバムの演奏内容に、個人的には最初大きな不満を感じたことをよく覚えている。
僕が考えるポールの音楽というのは、そのヴォーカルはもちろん、各楽器が入るタイミングや強弱、音色、弾き方、微妙なニュアンス等々がすべてポール・マッカートニーという天才が紡ぎ出す「マスタータッチ」、日本語的表現でいうなら「匠の技?」の集積により成り立っていると考えている。それはテクニックを超えたものである。
だから最初『ドライヴィング・レイン』を聴いたとき「これはポールの音楽ではないなと」(笑)。個々それぞれの演奏はうまいかもしれなかったが、まったく統一感、一体感が感じられなかったのだ。それはちょうど『オフ・ザ・グラウンド』を聴いた時と似たような感覚だった。
そしてその感覚が正しかったことが次のアルバム『ケイオス・アンド・クリエーション』で完全に明らかとなったのである。同じ楽器であってもただ「ポールが弾くだけで」、それは全く別モノの音楽を、世界でたった一つのマッカートニーサウンドを生み出していた。
『ケイオス・アンド・クリエーション』のプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチの最大の功績の一つは彼がバンドメンバーたちを完全にレコーディングスタジオから閉め出したことだった。そして、それを機にポールの新たな黄金時代が到来するのである。
だから、僕はポールのレコーディングにバンドは不要だと長い間考えていたのだった。しかし、この『フー・ケアーズ』を聴くかぎりそのような心配こそもはや不要なようだ。
この17年間にバンドはポールから多くを学び、成長してきたのである。彼らは今ではきっとポールが何を考え、どんな音楽を作りたいのかが手に取るようにわかるのではないだろうか。そんなツボを得た、抑えた演奏であると思う。
チケットぴあ ポール・マッカートニー日本公演2018 一般発売
エジプト・ステーション(初回生産限定盤)(特殊ソフトパック仕様)
ザ・ビートルズ ホワイト・アルバム 50周年記念盤(海外盤)
『ハッピー・ウィズ・ユー』に引き続き印象的なギターリフが心地良い、いかにもポールらしい軽快なロックナンバー。
てっきりポールがほぼ一人ですべての楽器を担当しているのかと思いきや、参加ミュージシャンのクレジットを見てびっくりした。単純にポール・マッカートニー・バンド5人だけの演奏だったからだ。ポールが担当しているのはヴォーカル、ベース、アコースティックギターのみで、あとはバンドの各メンバーがそれぞれのパートの楽器を担当している。
思えば、現在のバンドメンバーとのデビューアルバムは約17年前に発表された『ドライヴィング・レイン』にまで遡る。新しいバンドメンバーたちとライヴ演奏に近い感覚で録音されたこのアルバムの演奏内容に、個人的には最初大きな不満を感じたことをよく覚えている。
僕が考えるポールの音楽というのは、そのヴォーカルはもちろん、各楽器が入るタイミングや強弱、音色、弾き方、微妙なニュアンス等々がすべてポール・マッカートニーという天才が紡ぎ出す「マスタータッチ」、日本語的表現でいうなら「匠の技?」の集積により成り立っていると考えている。それはテクニックを超えたものである。
だから最初『ドライヴィング・レイン』を聴いたとき「これはポールの音楽ではないなと」(笑)。個々それぞれの演奏はうまいかもしれなかったが、まったく統一感、一体感が感じられなかったのだ。それはちょうど『オフ・ザ・グラウンド』を聴いた時と似たような感覚だった。
そしてその感覚が正しかったことが次のアルバム『ケイオス・アンド・クリエーション』で完全に明らかとなったのである。同じ楽器であってもただ「ポールが弾くだけで」、それは全く別モノの音楽を、世界でたった一つのマッカートニーサウンドを生み出していた。
『ケイオス・アンド・クリエーション』のプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチの最大の功績の一つは彼がバンドメンバーたちを完全にレコーディングスタジオから閉め出したことだった。そして、それを機にポールの新たな黄金時代が到来するのである。
だから、僕はポールのレコーディングにバンドは不要だと長い間考えていたのだった。しかし、この『フー・ケアーズ』を聴くかぎりそのような心配こそもはや不要なようだ。
この17年間にバンドはポールから多くを学び、成長してきたのである。彼らは今ではきっとポールが何を考え、どんな音楽を作りたいのかが手に取るようにわかるのではないだろうか。そんなツボを得た、抑えた演奏であると思う。
チケットぴあ ポール・マッカートニー日本公演2018 一般発売
エジプト・ステーション(初回生産限定盤)(特殊ソフトパック仕様)
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