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ポールの曲 “Mother Nature's Son(マザー・ネイチャーズ・サン)”

僕がポールの音楽人生の中で、最高にクリエイティブだと思えるのはホワイト・アルバムの頃だ(1967~1968年頃)。この頃のポールの楽曲は質・量共にとにかくずば抜けている。

ポールの手になるホワイト・アルバムの主なナンバーを列挙してみる。

バック・イン・ザ・U.S.S.R.
オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ
マーサ・マイ・ディア
ブラック・バード
ロッキー・ラックーン
アイ・ウイル
バースデー
マザー・ネイチャーズ・サン
ヘルター・スケルター
ハニー・パイ

ため息の出るような名曲がズラリと並ぶ。
さらにこの頃書かれた「ヘイ・ジュード」「レディ・マドンナ」を加えると、それだけで1枚のアルバムが出来上がるほどだ。

まさにフォークからハード・ロックまで、よくぞ一人の人間が短期間にこれほどバラエティに富んだ楽曲を書き上げられたものだと思う。(本当に神は不公平だ!)

「ホワイト・アルバム」の素晴らしさについては、またの機会にゆずるとして、今日はポールが書き上げた不朽のフォークバラード「マザー・ネイチャーズ・サン」について語りたいと思う。

若い頃にこの曲を聴いたときには、アルバム全体の中でも音量が小さく感じられるし、まるで子守唄のようだし、いまいち目立たない曲という印象だった。だが、長く聴きつづけるうちに、だんだんと好きになった。今ではアルバム全体の中でも最も好きな曲の一つだ。

ジョンの猛々しいロックナンバー「ヤー・ブルース」のあとにこの曲が来る対比の素晴らしさは、アルバム「アビー・ロード」で「アイ・ウオント・ユー」のあとに「ヒア・カムズ・ザ・サン」が続くのに似ている。

この曲にはなんとも言えぬヒーリングの効果を感じてしまう。ひょっとしたら元祖ヒーリング・ソングなのかもしれない…。この曲を聴いて、とても心が落ち着いたり、癒された気分になるのは決して僕一人だけではないだろう。

それにしても、この曲全体を貫くピンと張り詰めた空気、緊張感はなんだろう。この表現できない独特の空気だけが、ポールのビートルズ期とソロ期の最も大きな違いではないかと思うことがある。ビートルズの曲には、どの曲にも一種独特の不思議な空気があるが、この曲はほとんどポール一人で録音されたにもかかわらず、再現不可能とさえ思えるほどの空気、緊張感に満ち満ちている。それゆえに、このオリジナルバージョンと比較するとき、バック・イン・ザ・U.S.ツアーでのライブ演奏はどちらかといえば失敗に終わっていると言わざるをえない。

「マザー・ネイチャーズ・サン」は、同じアルバムに収録されている「ブラック・バード」と比べると知名度ではかなり落ちるかもしれないが、楽曲的には決してひけを取るものではない。どちらも独創的なギターフレーズを含みながら、曲としての完成度も極めて高い。ギター1本で、ここまで聴かせる曲はそうそうあるものではない。

最近の曲の中では「カリコ・スカイズ」がかなりイイ線をいっている曲と言えるだろうか。だが総合的に見れば、「マザー・ネイチャーズ・サン」で昇りつめた高みにはポールは2度と再び立ってはいないというのが、僕の正直な見方である。




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