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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その25

この記事にはネタバレが含まれます。

【21日目】 1月30日(木) ルーフトップコンサートを終えて
映画『レット・イット・ビー』ではビートルズ4人が屋上での演奏を終えた直後にエンド・クレジットが流れたと記憶しているが、『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』はまだ終わらない。場面は再び地下のコントロールルームへと移される。今終わったばかりの演奏のプレイバックを聴くために全員がそこに戻ってきたのである。

ここで交わされた会話は非常に重要なので、できるかぎり抜粋しておこう。(名前が抜けているものは誰の発言かが不確定なもの)
ジョージ「警察はなぜダメと言ってた?」
「治安妨害」
ジョージ「治安妨害って?」
「騒音のことだ」
ジョージ・マーティン「今後何をするにせよいいリハーサルだ。ライヴ自体もよかった。」
ポール「そうだね」
ジョージ「次はロンドン制覇だ」
ジョン「明日はヒルトンでやる」
「大音量で流す」
ジョージ「世界中のロックバンドがビルの屋上で同じ曲をやるんだ」
ポール「箱に固定された僕らが歌うんだ”ゲット・バック!”ってね」

今しがた屋上で演奏された曲のプレイバックを聴く皆の顔はとても楽しそうでリラックスしている。またひと仕事終えたあとの満足感に満ちている。そう、そこにあるのはビートルズファミリーといってもよいほどの親密度と信頼関係である。狭いコントロールルームなので、全員が身体が触れるほどに接して座っている。だが、そこに見えるのは「笑顔」また「笑顔」だ。彼らは本当に仲が良かった。そして、それは演技などではけっしてないことを8時間ものドキュメンタリーを観てきた僕たちは知っている。そう、今ビートルズの歴史が書き換えられたのだ。

もう一つの印象的なシーンがここに記録されている。握り合っているポールとリンダの手に向かって、そーっとリンゴの手が伸びる・・・。そして上からリンゴの手が重ねられる。それに気づいて笑うポールとリンダ。まるで子供のようにはしゃぐ3人。とても心温まるシーンだ。

さらに会話は続く。
「まだ今日は働く気分かい?」
ポール「ああ、残りを録音する」
「機材を運ばなきゃ」
「休憩したい」
ポール「昼食を食べ、やってないアコースティック曲を録ろう」
「上で?」
ポール「ここでだ」
「屋上は十分」
ポール「もう屋上はやらない。この続きは下でやる。」
「だが機材を下ろすのは時間がかかる」
ジョージ「映画では警察のせいで屋上から下りたことに」
ジョン「ありのままでいいって」

大仕事を終えた後だというのに、ポールはもう次の録音をやる気満々である。しかし、機材を下ろすのに時間がかかるからだろうか、最後のレコーディングは翌日にやることに決まった。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その24

この記事にはネタバレが含まれます。

【21日目】 1月30日(木) ルーフトップコンサート本番(2)
"One After 909"
『アイヴ・ガット・ア・フィーリング』に続いて、この曲もここで演奏されたテイクがアルバム『レット・イット・ビー』に正式採用されたことが、画面下のテロップで告げられる。一発勝負、10台のカメラ、屋外、しかも冬のロンドンの寒空の下という過酷な条件のもとで、ビートルズは次々にベストテイクを生み出してゆく・・・。
特にこの『ワン・アフター・909』はこれまでにリハーサルで聴いたものとはまるで違う疾走感と、高い緊張感を併せ持ったライヴならではの名演といえるだろう。とりわけジョンとポールのツインヴォーカルは圧倒的で、彼らの雄姿に完全に目が釘付けになってしまう。

"Dig A Pony"
演奏前にジョンが「歌詞が欲しい」と言い出す。まだ完全に覚えきってはいなかったのだろう。そうしている間にもアップルビル1F受付では、警官とスタッフたちの押し問答が続いている。そして、ついに屋上から下に降りてきたのはロード・マネージャーのマル・エヴァンスだ。機材の持ち運び、楽器のセッティング、ランチの手配、歌詞の書き取りから使い走りに至るまで、ほぼあらゆる雑用をビートルズのためにこなしてきたように見えたマル・エヴァンス。彼がここにきて最高の仕事をしたことが映像として記録に残っている。
マルは、ああです、こうです、ともっともらしい言い訳を駆使しながら、警官たちが屋上に行くのを先へ先へと引き延ばしにしていたのである。今この映像を見ると、ビートルズのルーフトップコンサートの成功を陰から支えた重要な立役者の一人はマル・エヴァンスだったことがわかる。彼もまた再評価されるべき人物の一人だと思う。
『ディグ・ア・ポニー』もまた出来がすばらしく、3曲連続でベストテイクとしてアルバム『レット・イット・ビー』に収録された。演奏後にジョンが言う、「寒くてコードが押さえられない」。だが、それでもこの演奏。なんということだろうか。

アップルビル前の通りには大群衆が集まっている。彼らの表情から、そのほとんどの人が突然のビートルズの演奏に好意的な感情を持っていることが伺える。それにしても当時の人々の顔は皆生き生きとして明るい。

"I've Got A Feeling"
2度目の演奏だが、やはり出来はレコードに採用された1度目のほうが良いようだ。そして、ついに業を煮やした警官たちがマルの後ろについて屋上へと向かう。警官にとってはもう限界だったのだろう。

"Don't Let Me Down"
この曲も2度目の演奏。そして、とうとう4人の後ろに警官たちが姿を現す。万事休すといったところだが、意外にもビートルズ4人はまったく気にすることなく演奏を続けている。ポールなどは警官の姿を見てさらにテンションが上がっているようにさえ見える。

"Get Back"
ルーフトップコンサート最後の曲。もう警官の我慢も限界に達していることが画面から見て取れる。また、4人共この曲が最後ということが分かっているようだ。マルがやむを得ず後ろでこっそりとPAの電源を切るが、すぐにジョージとジョンは電源を入れ直す。
中間部でポールがアドリブで歌う、「また君は屋上で遊んだな。ダメだ、ママは嫌がってる。怒ってるぞ、逮捕させるって。」もちろん警官たちに対する皮肉である。警察権力にも簡単に屈しないポールの姿勢は単純にカッコ良いと思う(個人の感想です)。現代人は1960年代、1970年代の反骨精神を失ってしまったように感じる。

そして、画面に「4人最後のパフォーマンス」のテロップが流れる。

ジョンが言う、「皆を代表しお礼を。オーディションに通るかな?」(爆笑)。最後はいかにもジョンらしいユーモアたっぷりの言葉で締めくくられる。そして、このドキュメンタリーもエンディングへと近づいてゆく。(続く)

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その23

この記事にはネタバレが含まれます。

【21日目】 1月30日(木) ルーフトップコンサート本番(1)
ついにアップルビル屋上に現れたビートルズ。

ここまで来るには様々な紆余曲折があった(そして、僕たちはその経緯をつぶさに見てきた)。だが、彼らが今直面しているもの。それはやり直しのきかない一発本番のライヴ演奏であった(実際、彼らはその日その時まで屋上で1曲たりとも演奏していなかった)。並みのグループならばプレッシャーに負けて実力を発揮できなかったかもしれない。だが、4人は最後の最後までビートルズだった。そう、このプレッシャーの中で彼らは持ち前の強烈な勝負強さを発揮する。

ロンドンの寒空の下に現れた4人の雄姿は、明らかにそれまでの彼らではなかった。彼らのスイッチはまちがいなくオンになっていた。「あのときの彼らには神が降りていた」という言い方もできるほどに・・・。特にポールとジョンは人が変わったようにとてつもないカリスマ性を身にまとったように僕には思えた。そして今、一番生き生きと楽しそうなのはポールだ。20代にしてこの現場を楽しんでいたポール・マッカートニーに、僕は畏敬の念を感じざるを得ない。

そして、ついに・・・。楽器のチューニングと、1曲にも満たない短いサウンドチェックを終えた彼らは唐突にルーフトップコンサートを開始する。

"Get Back"
オープニングはやはり彼らのニューシングルとなった『ゲット・バック』。ポールのヴォーカルはより力強く、そしてビリーを加えた5人の演奏はよりタイトに仕上がっている。明らかにこれまでに聴いてきた『ゲット・バック』とは質的に異なっている。ロックのノリだ!曲が終わったあともポールは余裕しゃくしゃくで、本当にこの場にいることを楽しんでいるように見える。ポールファン(の僕)にしてみればゾクゾクするような場面が続く。

"Get Back"
オープニングに続いて、2曲目に演奏されたのも『ゲット・バック』だった。1曲目の演奏もけっして悪いものではなかったのだが、なぜこの曲を続けて演奏したのかは不明である。(最初から決められていたのだろうか?)

"Don't Let Me Down"
ポールばかりが目立ち過ぎてはいけない。やはり3曲目はジョンの曲である。待ってましたとばかりジョンが類いまれなスター性を発揮する。それはポールの「それ」とは違い、まるで内側からにじみ出てくるかのようだ。曲の後半に市民からの苦情を受け警官たちがアップルビルの下に集まり始める。

"I've Got A Feeling"
ライヴ演奏と同時並行で路上、そしてアップルビル内での動きが画面分割により僕たちの目の前に展開される。そして、ついに警官たちがアップルビル1F受付を訪れる。この時点で何が起こるかは誰にもわからなかったはずだ。筋書きのないドラマが今始まる。
警官は30分で30件もの騒音の苦情が来ていることをアップルのスタッフたちに告げる。そして、彼らがこの時点ですでに演奏の中止を求めていることが、当時の騒音の大きさを物語っている。警官は「治安妨害であり、署への連行もあり得る」と明言している。これは冗談では済まない事態だ。改めてビートルズはものすごい事をやったのだと思う。
ついに警官の一人が言う「もう結構。音を下げないなら逮捕します。逮捕したくはないが、見過ごせない。」
だが、屋上での4人の演奏はこの日のピークを迎えていた。なんとこの時の演奏が『アイヴ・ガット・ア・フィーリング』のベストテイクとなり、実際にアルバム『レット・イット・ビー』に収録されたのである。まさに屋外ライヴとは思えぬ完成度だ。(続く)

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その22

この記事にはネタバレが含まれます。

【21日目】 1月30日(木) ルーフトップコンサート直前
新年1月2日から始まったセッションも、今日は1月30日。僕たちはほぼ丸々1ヵ月という長期に渡ってビートルズの動向を追ってきたことになる。一つのグループをここまで詳細に追ったドキュメンタリーがこれまで他に存在したかどうかを僕は知らない。しかし、ことビートルズに限っていえば、カラー映像で4人が演奏したり、自由に会話したりする姿というのはこれまで極めて限定的にしか存在しなかった。
『ヘルプ!』『レット・イット・ビー』の映画、そしてTV特番の『マジカル・ミステリー・ツアー』を除けば、それらは『ヘイ・ジュード』『レヴォリューション』『ペニー・レイン』『ストロベリーフィールズ・フォーエバー』等のプロモ映像であったり、シェア・スタジアムのライヴ映像であったりするのだが、学生の頃から40年以上もビートルズを聴き続けてきた僕のようなファンからすれば、それらはすべて「もう見飽きた」と言い切れるほどに繰り返し、繰り返し見続けてきた映像というのもまた事実である。

そして僕はもうこれ以上新しいビートルズのカラー映像が出てくることなど夢にも思ったことはない・・・。

ところがである!『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』で公開された映像はほぼ全てが初公開の鮮明なカラー映像でありながら、その長さが約8時間というとんでもないお宝であった。しかもその内容は超一級である。これを奇跡と言わずしてなんと言おうか・・・。実際僕は今でも自分が見てきたものが信じられないほどだ。

ともかくここは今一度神様に感謝して、話を続けることにしよう。ついにルーフトップコンサート当日である。

この日の映像はアップルビルの屋上でカメラ、機材、楽器等々をセッティングするリンゼイ・ホッグ監督とスタッフたちの慌ただしい様子を映し出すことから始まる。この前代未聞のライヴ映像を収録するためにリンゼイ・ホッグ監督は10台のカメラを様々な場所に用意した。5台は屋上に、1台は向かいのビルに、3台で通りの様子を捉え、残りの1台はアップルビル1F受付に設置された「隠しカメラ」だった。これらは実に用意周到で、僕たちはこれからこの前代未聞のゲリラライヴの一部始終を目にすることになる。映画監督としてはそれほど大きな成功を収められなかったリンゼイ・ホッグ監督だが、この日のルーフトップコンサートを含め、ビートルズの膨大な映像と音声を後世のために残した功績はどれだけ称賛しても称賛しすぎることはないであろう。ブラボー、マイケル・リンゼイ・ホッグ監督!

まずはジョージ・マーティンがアップルビルにご出勤。受付の隠しカメラに向かって微笑む。彼もこのカメラのことを知っていたのだ。続いてグリン・ジョンズが出勤。2人は屋上のライヴを地下のコントロールルームで録音する。ここにも若き日のアラン・パーソンズの姿が見える。

それにしても、アップルビル屋上のスペースは驚くほど狭かったことが、離れたビルから映し出される映像からわかる。だが、意外にもその「狭さ」は実際に4人を映し出したパフォーマンスからはほとんど感じられないのもまた不思議である。リンゼイ・ホッグ監督は本当にいい仕事をしたと思う。

ライヴに向けてのセッティングが行なわれる中で、ビートルズ4人は下の階の部屋に集まっていた。「まだ、屋上での演奏をためらっている」というテロップが流れる。この部屋の中でどのような会話が交わされたのかはわからない。だが、ともかく4人は屋上ライヴをやるという最終決断を下す。

最初に屋上に姿を現したのはポールだった。「全カメラ、テイク1!」の声が飛ぶ。次に現れたのがリンゴ、そしてその後ろがビリー・プレストン。続いてジョージとジョンも姿を現す。そして思い思いにチューニングを始める。その顔にはもうためらいの表情はない。実際に屋上に出て、もうこれはやるしかないと思ったのだろう。

"Get Back"
「最終チェックだ」の声と共に、ジョンのギターソロから唐突に演奏が始まる。サウンドチェック代わりの演奏だろうか。突然の大音響に驚く通りの人々の顔、顔。皆が上を向いている。

そして、ここから画面が3分割されるという粋な演出により、いよいよルーフトップコンサートの開始が告げられる。そして僕たちはこれから初めてその「完全版」を目にすることになる。ドキュメンタリーの残り時間はあと50分。(続く)

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その21

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【20日目】 1月29日(水)
いよいよルーフトップコンサートが翌日に迫った。しかし、現実には1日前だというのに、まだメンバーたちの心は揺れていたのである。それゆえ、この日はビートルズと監督、プロデューサー、スタッフたちがスタジオに集まってルーフトップコンサートをやるかどうかを話し合う場面から始まる。

アップルビル地下のスタジオに拠点を移してから、音楽的にはあらゆる意味で改善したにもかかわらず、今後の方向性については4人の考えは未だまとまってはいなかった。ここでもなんとか意思統一を図ろうとポールが奮闘しているが、なんと結論はルーフトップコンサート当日まで持ち越されることになったのだった。

このあたりの経緯も、僕はこのドキュメンタリーを観て初めて知った。というのも、僕はビートルズファンでありながら、ビートルズ関係の本や資料をほとんど読まないという一風変わったファンだからである。いずれにしろ、ルーフトップコンサートはすでにコンサート活動を休止していたビートルズにとっては大変な葛藤の末に導き出されたギリギリの結論であったのだ。だが、彼らはこの前代未聞のゲリラ的路上ライヴ(と言ってもいいと思う)を見事をやり切り、結果として素晴らしい映像を残してくれたのだ。
まさに最後の最後に彼らは最高のライヴパフォーマンスと最高のアルバム(アビイ・ロード)を残して永遠にこの世から姿を消した。奇跡のグループ、ビートルズ・・・。

というわけで、結論はルーフトップ当日まで持ち越されたが、最後まで抵抗していたのはジョージだったように見える。
ジョージ「いいさ、やらなきゃいけないならやる。僕たちはバンドだ。でも本当は屋上ではやりたくないけどね。」
リンゴ「僕はやりたい。」
ポール「やりたい?」
ジョン「僕も屋上でやりたい。」
ポール「まったく多様な連中だ。」
ジョン「やりたくない人がいても気にしないけどね。」

ここではポールは明確な意見は述べず、まとめ役に徹しているように見える。だが、状況的にはジョージだけが屋上でやることに反対していたようだ。しかし、彼の表情は険しいものではなく話し合い自体は協力的な雰囲気で進んでいる。

というわけで結論はルーフトップ当日に持ち越されたが、ともかく4人はこれまでにやった曲の最終確認をすることに決め、本日のリハーサルが開始される。その現場にはポールの弟マイク・マッカートニーの姿も見える。あまり知られていないが、彼も当時すでにミュージシャンとしてある程度の成功を収めていた。

昼食のためポールとマイクがスタジオを後にする。すると、ジョージがジョンに向かって話しかける。
ジョージ「ジョン、やりたいことがある。今結構な数の曲が手元にたまってる。10年分、アルバム10枚分の質のいい曲ができてる。だからやりたいと思って。アルバムを作りたい。」
ジョン「ソロアルバムを?」
ジョージ「ああ。でも僕が思ったのは、たまった曲を外に出したいんだ。」
ジョン「いいと思うよ。」(ヨーコも大きくうなずく)
ジョージ「自分の曲がまとまったらどうなるか見たい。」
ジョン「LPを出し、結束しようって時にソロか。」
ジョージ「でも全員が個別に活動できればいいと思うんだ。そうすることでビートルズがより長続きすると思うし。」
ジョン「はけ口ってわけか。」
ジョージ「他人に曲をあげ、活かすことも考えたけど、気づいたんだ”バカげてる。自分のために使おう”と。」
ジョン「正しい。いいと思う。」

ここでジョージが示したものは、彼が自分の書き溜めた作品を世に問いたいと真剣に思っていたこと。そして、それがビートルズ存続のためにも必要だと感じていたこと。また、その思いをポールにではなくまず最初にジョンに相談したという事実である。彼はポールではなく、まずはジョンに意見を聞きたかったのだ。だがジョンはその考えに概ね理解を示したものの、ソロアルバムについては積極的な賛成の意志は示さなかったように思える。僕はここにジョージの深い葛藤を感じる。溢れるほどの才能が開花しつつあるのに、それを思い切り表現できない苦しみである。

"I Want You"
ここではキング牧師の言葉を替え歌にして特にジョンとビリーがノリノリで歌っている。ポールは珍しくスライドギターを弾いている。

"Two Of Us"
ジョンとポールが共に腹話術風に、歯を閉じたままの状態で歌っている。特にジョンはスーパースターらしからぬ変顔で笑わせる。

この日の映像を見るかぎり、ルーフトップコンサートの前日だというのに、4人は特に詳細な打ち合わせをするわけでもなく、レコーディングをするわけでもなく、かなり軽い練習で1日を終えたという印象だ。だが雰囲気は依然としてよい。とにかく「また明日」ということで解散となった。いよいよクライマックスが近づいた。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その20

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【19日目】 1月28日(火)
悪天候予報によってルーフトップコンサートが1日延期されたことにより、ビートルズに残された時間は今日と明日の2日のみとなった。
だが今日も4人は元気いっぱいだ。

一日の始めに、残された時間になにをやるべきかが話し合われる。そしてジョンが言う、「ドント・レット・ミー・ダウンとアイヴ・ガット・ア・フィーリングはもう十分にやった。もういい。まとまってない曲をやろう。ジョージの新曲を覚えよう。」

"Something"
そして4人はジョージが作りかけだった名曲『サムシング』をやり始める。ドキュメンタリーの中盤ぐらいまではジョンとポールの曲や歌で大半が占められていたが、後半に進むにしたがってジョージの出番が増えてくるのは嬉しいことだ。
途中で歌詞に行き詰まったジョージが言う、「ポール、"彼女の何気ない仕草が・・・"の続きが出ない」。なんとジョージは素直にポールに助けを求めているのである。歌詞に関してならジョンに助言を求めたほうがよさそうなものだが、ジョージが実際に声をかけたのはポールだった。しかし、この問いかけに即座に答えを返したのはジョンだった・・・「"カリフラワーみたいに"とか入れ、後で考える」。そして曲はみるみるうちに形を成してゆく。

"Love Me Do"
ジョージ「ラヴ・ミー・ドゥーの歌詞は最高だ。」
ポール「ああ、たしかに」
そしてジョンとポールが即興で歌い始めるが、出来はあまりよくない。

ここでポールが私用のため一時席を外す。ジョン、ジョージ、リンゴ、3人だけでリハーサルが続く(ビリーもいる)。

"I've Got A Feeling"
ポールがいない間に3人だけで実際何曲やったのかは不明だが、ここで『アイヴ・ガット・ア・フィーリング』を練習する3人の姿が映し出される。ポールの曲をポールがいない間に練習するというのもなんだか意外な気がしたが、ひょっとしたらポールがいない間に手直ししたい部分があったのかもしれない。
ここでジョージが手にしているカラフルなギターはマジカル・ミステリー・ツアー『アイ・アム・ザ・ウォルラス』の場面でジョージが使っていたものと思われる。

ここでジョンがジョージとリンゴにアラン・クラインと会ったときの話をし始める。果たしてこの話をポールがいない時にしたのは偶然であろうか?個人的にはそうは思えないのだが、ともかくジョンはアラン・クラインを当時から非常に高く買っていて、少なくともこのドキュメンタリーにおいては彼に対する称賛が最後まで止むことはなかった。それはある意味心酔しているとさえ言えるほどのものである。

ビートルズ4人のうちただ1人ポールだけがアラン・クラインをビートルズのマネージャーとして認めず、この件に関して最終的にポールがジョン、ジョージ、リンゴを提訴する事態にまで発展したのは有名な話である。しかし、ポールが正しかったことはすでに歴史が証明済みである(ジョン本人までもが「ポールは正しかったかもしれない」とのちに認めている)。あの頭のいいジョンさえもがダマされたのだ。この事実は銘記しておいたほうがよいと思う。彼だって人間だ。判断を誤ることだってある。というわけで、まんまと彼はダマされ、ジョージとリンゴも「ジョンが言うのだから」ということで彼に賛同した部分は大きかったのではないだろうか。つまり、ここでもジョンがビートルズ解散の種を作ったという説は十分に成り立つと思う。ジョンがアラン・クラインをビートルズのマネージャーとして招き入れなければまた違ったことになっていただろうから。

"Old Brown Shoe"
ジョージが再びピアノの前に座り歌う。

"Don't Let Me Down"
外出していたポールが戻り、4人でのセッションが再開される。このときのテイクがのちにシングル『ゲット・バック』のB面に採用される。僕は昔からこのテイクが大好きで長年愛聴してきたのだが、この曲がアップルの地下スタジオでほとんどライヴで録音されたとは知らなかった。そのときの録音シーンが今見れるとは幸せだ。

"I Want You"
初期のヴァージョンで皆かなり自由にやっている。

"Half A Pound of Greasepaint"
レノン/マッカートニーの未発表曲。

そして、この日のセッション終了後4人はアップルビルの上階でアラン・クラインと初顔合わせをする。19日目のセッションが終了した。ルーフトップコンサートまでいよいよあと残り1日だ。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その19

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【18日目】 1月27日(月)
これまで18日間分のビートルズのリハーサル&レコーディングを見てきたが、この日の映像はあらゆる意味で特別すばらしいものとなっている。なによりも4人の表情が実に生き生きとしているのである。『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』は合計8時間近い大作だが、この1月27日~ルーフトップコンサート~エンディングまでの約2時間に渡る映像は単純に全体のハイライトと言ってもいいぐらいの内容だ。少なくとも僕個人はこの部分だけを何度も観返すことになるだろうと思う。
それぐらい、この日以降の映像と、それ以前のものには明らかな違いがあるのだ。ひょっとしたら、当初映画として公開が予定されていた『ゲット・バック』は、1月27日以降の映像がメインになっていたのではないかと思えるくらいなのだ。

"Blue Suede Shoes"
"Kansas City"
"Miss Ann"
ビートルズとスタッフ、関係者たちの生き生きとした姿が見事に映像に収められている。こんなすばらしい映像が50年以上も倉庫に眠っていたなんて本当に信じられない。ここではなんとジョンとポールが手に手を取ってダンスを踊るシーンまでもが映像に残されている。映画『レット・イット・ビー』からは想像すらできなかったシーンだ。

今日も朝から雰囲気は最高だ。
ジョージ「昨夜は作曲で夜更かしした。違う要素を合わせたよ。ハッピーでロックな曲だ。」「お陰で朝食がまだだ。寝なきゃと思うんだけど、10年前の君(ジョン)の声が聞こえる。曲を書きだしたら最後まで仕上げろ!昔言ったろ、始めたら終わらせろ。」
ジョン「自分じゃできない。それが一番なんだがね(笑)」

誰もが楽しそうだ。ポールはジョージ・マーティンと笑顔で話している。ジョージはビリー・プレストンにピアノコードの質問をしている。

"Old Brown Shoe"
そしてまた1曲、名曲が生まれようとしていた。ジョージが昨夜書いた曲なのだろうか・・・。彼がピアノを弾きながら、なんとかこの曲を仕上げようと奮闘している。ピアノの傍らには曲に合わせてノリノリで身体を動かすポール。そしてリンゴ、ビリーもいる(ジョンはまだ出勤していないようだ)。
ジョージ「ピアノはすごい。勉強しなきゃ。こういうのはギターじゃできない。」
しばらくして、曲に合わせてポールがドラムを叩き始める。それにジョージが笑顔で応える。
次のカットではリンゴがドラムを叩き、ポールとビリーが曲に合わせて2人でエレキギターを弾いている珍しいシーン。そしてジョージはポールのアドバイスを受けながら、ついに曲は完成形へと近づいてゆく。アイコンタクトしながらギターを弾くポールとピアノを弾くジョージ。とても美しいシーンである。

"Let It Be"
"The Long And Winding Road"
このセッションを始めた頃のどこか割り切れないような雰囲気はもうここには微塵も感じられない。4人は完全なチームワークを取り戻し、ただ曲を完成させることだけに集中しているようだ。

"Oh! Daring"
この曲の途中でジョンが皆の前で発表する、「ヨーコの離婚が成立したよ。自由だ。僕は今朝ついに自由になった。」。その言葉に笑顔で応える3人・・・。ジョンが上機嫌なのも無理はない。

"Don't Let Me Down"
この曲もついに最終段階に近づいたようだ。

"Strawberry Fields Forever"
ポールがピアノを弾きながら歌う。大変貴重な場面だ。

"Get Back"
この曲も最終段階だが、まだ気に入ったテイクが取れないようだ。

"Take These Chains From My Heart"
ポールが歌っているが、「テープをムダにするな」とコントロールルームから指示が飛ぶ。

"Get Back"
ここでは満足のいくテイクが取れるまで何度も何度もやり直すビートルズ4人の姿が克明に捉えられている。とにかく一度スイッチが入ったら誰が何と言おうと納得が行くまでやるといった感じの4人。まさにプロと言えるだろう。何度もスタジオとコントロールルームを往復する4人。そして、ついに『レット・イット・ビー』に収録されたテイクが取れたのだった。

"I've Got A Feeling"
この曲も完成に近づいているが、今日のところはまだポールが納得していないようだ。完成は明日以降におあずけとなった。

ルーフトップコンサートは1月29日に予定されていたが、悪天候が予想されたため1日延びて1月30日となった。今日は1月27日だから、4人にはあと丸2日時間ができたことになる。

ここにきていよいよ本領発揮。今やバンドの雰囲気は最高である。この状況の中でルーフトップまであと2日・・・。今の彼らにできないことは何もない。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その18

この記事にはネタバレが含まれます。

第3部(Part 3)

【17日目】 1月26日(日)
以下の日本語字幕から第3部(Part3)が始まる。
「アルバムと実現微妙なショーを目指して16日。1月末までに終了させる必要がある。最新案は自社ビルの屋上でのライヴ。日程は3日後である。」

ついにルーフトップコンサートが1月29日(水)に行われることが決定された。残された日数はあとわずか3日間・・・ということで、今日もビートルズの4人は休日返上でリハーサルとレコーディングを開始する。

"Octopus's Garden"
この日の冒頭のシーンはリンゴが自分でピアノを弾きながら『オクトパス・ガーデン』を作曲しているシーンである。まだスタジオにはリンゴとジョージだけ。ジョンとポールは姿を見せていない。すぐにジョージがピアノのそばに来てリンゴに作曲のアドバイスを与える。とてもいい雰囲気で作曲が進む。そこへジョージ・マーティン、ジョン、ヨーコが姿を見せる。そしてなんとジョンが曲に合わせてドラムを叩き始める。ジョン「座るの初めてだ」。続いてポールとリンダ、リンダの娘ヘザーが姿を見せる。ヘザーの登場で現場は一気に子供のエネルギーに満たされるが、そこにいる誰もが彼女を自然に受け入れ、彼女が自由に遊ぶのを許しているところがなんとも微笑ましい。

"Let It Be"
昨日に引き続きこの曲のリハーサルが続く。より細かなディテールが練り込まれてゆく。

"I Told You Before"
ビートルズ4人共作のクレジットが流れるが、この曲もほとんどのファンには馴染みがないだろう。ここでヘザーがヨーコのおたけびを真似てビートルズと共演するところが面白い。ヨーコのスタイルは疑いなくヘザーに影響を与えたようだ(笑)。

"Twist And Shout/Dig It"
「演奏の一部は『レット・イット・ビー』で使われたとのテロップが流れるが、疑いなくそれは『ディグ・イット』のことだろう。余談になるがポールの子供に対する接し方を見ていると、彼が本当に子供好きなのがよくわかる。僕自身が子供好きなので彼の態度すべてを見ていてそれがわかるのだ。

"Blue Suede Shoes"
ジョンが歌う。彼は今日も調子がいいようだ。

"Shake; Rattle And Roll"
今度はジョンとポールのツインヴォーカルだ。演奏の息もピッタリで、この曲が4人にとってなじみの曲であることがわかる。

"The Long And Winding Road"
このドキュメンタリーではジョンはほとんど座ったままで演奏しているが、ここでは珍しく立ってギターを弾いている。
しばし練習したあとでグリン・ジョンズがポールに向かって「録っていい?」と聞き、その直後に録音したテイクが『レット・イット・ビー』に採用されている。なんという集中力であろうか。
コントロールルームでのプレイバックのあとで、ジョージが非常に積極的に曲の仕上げに関して意見を言っている。このシーンだけを見ても、ポールとジョージはけっして仲違いしていたわけではなかったことがわかる。ジョージはよりよく曲を仕上げるために率直な意見を言い、ポールもそれに反論することなく理性をもって答えている。ポジティヴなエネルギーを感じるよいシーンだと思う。

というわけで、本日もとてもいい雰囲気で1日が終わる。ルーフトップコンサートまであと2日だ。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その17

この記事にはネタバレが含まれます。

【16日目】 1月25日(土)
これまで土曜日はオフだったが、この日は休み返上でのレコーディングである。思えばこのプロジェクトがスタートしたのも「正月早々」1月2日からだった。もうすでに富も名声も得ていたはずの4人だが、まあよく働いているなと思う(笑)。

冒頭には4人がインドに行っていたときのプライベートビデオらしき映像も流される。こちらの画像は荒いままだが、リストアが不可能だったのか、それとも故意に荒いままで流したのかが気にかかるところである。「昨日このフィルムを観たんだけど・・・」とポールがそのビデオについて話し始め、映像とスタジオとを交互に切り替えながら他のメンバーも話に加わってゆく編集が見事だ。こういう話をごく普通に和気あいあいとやっている彼らを観るのはとても楽しいし、心が癒される。1969年1月25日・・・少なくともこの日まではたしかにビートルズ4人は仲がよかった。

"Act Naturally"
ほんの数秒だがジョンが即興で演奏する。

そして、今日も1日ビリー・プレストンがテレビ出演のためスタジオに来れないことが告げられる。

"Bye Bye Love"
ジョンとポールが即興で歌っている。

"Two Of Us"
このシーンでは再び「ジョンとポールだけの世界」が出現する。2人がひとたびこのモードに入ったなら、ジョージとリンゴは完全に蚊帳の外に置かれているという感じがする。ジョンとポール、2人の結束が極めて固いことを再認識させられるシーンである。
ミキシングルームにはテープ・オペレーターとしてアラン・パーソンズの姿が見える。またこのときヨーコはジョンのそばにはおらず、壁に貼った紙に「春」と筆で書いているシーンが映る。

ここでプロデューサーのグリン・ジョンズが木曜日に他の仕事のため現場を離れなくてはならないことが告げられる。すなわち、もうビートルズに時間はなく、翌週の火曜日までに全曲録音を完了させなくてはならないことが判明したのだ。

"For You Blue"
やっとジョージの番が巡ってきた、おまたせジョージ!という感じである。ポールファンの僕もこのシーンは嬉しかった。そして時間のない切迫した状況の中で、ビートルズ4人は隙の無い完璧な演奏をし始める。ジョンも「今日のオレはピークだ」と上機嫌である。そして数テイク後に「この演奏は『レット・イット・ビー』に収録された」というテロップが流れる。ビートルズはこの状況の中わずか数テイクで1曲を完成させたのだった。

それにしても即席のミキシングルームでプレイバックを聴きながらくつろぐ4人やスタッフたちの姿は見ていてとても心地よいものがある。とにかく雰囲気がよいのである。誰もがとても信頼し合っていて、親密な関係であるのが50年の時を越えて画面から伝わってくる。

そして、画面に以下の説明が映し出される。
「プリムローズ・ヒルでのライヴは不可能となる」
今一つの可能性が消えたのだった。

リンゼイ・ホッグ監督の説明が続く。「元はショーとアルバム。ショーのライヴ盤だ。今はショーが消えてる。」
ジョン「演奏するのは好きなんだ。ただステージで演奏するだけならね。」「だから特番に賛成した。弾くだけだ。誰もライヴや特番をやりたくない。」「要するに誰も外に出ていきたくないわけだ。」「今からどうショーをやる?」
ポール「答えられないよ。答えなんかないさ。」
ジョージ「僕らがやって成功したことは。今回以上に無計画だったはずだ。何かを始めたら勝手に進むものだよ。」「どうなるにせよ、形にはなるさ。」
ジョン「ポールの望む形じゃない。ショーが彼の曲だとしたら、今は僕らの曲に変わってしまった。まあ結局はそういうことだよ。」
ポール「分かるよ。最終的には多数決だな。」
ジョン「今はドキュメントだからカメラがないフリをしてる。でも歌う時だけカメラを見るってのはどう?」「つまり歌う時だけカメラを意識するんだよ。」「ショーとしてカメラに向かって歌う。フィナーレで作った曲を全部歌う。」
ジョン「どう思う?」
ジョージ(深くうなずく)

そしてさらに真剣な話し合いが続く。しかし、考えはなかなかまとまらない。

"I Lost My Little Girl"
ポールが14才のときに初めて書いたというこの曲を、なんとジョンが歌っている。これは貴重だ。

最終的にリンゼイ・ホッグ監督と、グリン・ジョンズの発案により、アップルビルの屋上でライヴを行うことが決定される。有名なルーフトップコンサートは、大変な紆余曲折を経て捻出されたアイディアであり、ある意味「妥協案」でもあったのだ。

その後屋上を視察に出かけるポール、リンゴ、そしてスタッフたちの姿が映し出される。これもなかなか貴重な場面だ。

"Let It Be"
かなりの時間をかけてリハーサルが行われたことがこのシーンから推測される。しかし今日は完成には至らず、本日のレコーディングが終了する。

以上をもってパート2が終了する。
画面に以下のテロップが流れる。
「4人は屋上でのライヴを水曜日に設定する」

つまりルーフトップコンサートまで、日曜、月曜、火曜の3日間しかないということだ。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その16

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【15日目】 1月24日(金)
この日は4人が雑談をするシーンから始まる(この日ビリー・プレストンは他の仕事で遅れていた)。ビリーをバンドに加えることや、ギャラのこと、彼のレコードをジョージがプロデュースすることなどが話し合われる。

"On The Road To Marrakesh"
のちにジョンがアルバム『イマジン』に収録した『ジェラス・ガイ』の原曲。ジョンが「30人のストリングスをつける」と言っている。

"School Days"
チャック・ベリーの曲。ここでグリン・ジョンズがポールに「ベースを替えて」といい、ポールはヘフナーの替わりにリッケンバッカーのベースを弾き始める。だがポールはこのベースが気に入らず、ジョージ・マーティンがポールの前に座って手助けしようとしているシーンが印象的である。今回のプロジェクトではジョージ・マーティンはグリン・ジョンズにプロデュースを譲っているが、ドキュメンタリー内では度々顔を見せている(ひょっとしたらほとんど毎日来ていたのかも?)。だが、ほとんどのシーンで彼は寡黙であり、あまり口数は多くない人という印象を受けた。

"Two Of Us"
上記の流れでポールが「この曲はベースなしでやる」といい、アコースティックギターに持ち替えたところが面白い。

"Polythene Pam"
ジョンが歌う。まだ未完成のようだ。

"Her Majesty"
"Teddy Boy"
またポールが別の曲の引き出しを開ける。ポールがこの当時どれだけのストックを持っていたのかをあとでまとめてみたいと思う。

"Maggie Mae"
遅れていたビリーが顔を見せている。

"Fancy My Chances With You"
レノン/マッカートニーの未発表曲。「彼らが10代の頃の作品」とのテロップが流れる。

ここでビリーが参加。ポールがビリーに尋ねる「毎日来られるか聞かれてない?」。ビリー「喜んで。今は空いてるし。」

"Dig It"
ここではこの曲は4人の共作ということになっている。当時ジョージの妻であったパティがスタジオを訪れる。

"I Feel Fine"
本日のセッションは終了。他の3人は帰ろうとしているが、ジョンが一人椅子に座りギターのイントロ部分から熱心に弾いている。

この日はほとんどビリーが不在だったためか、結局本格的なレコーディングは行わなかったように見える。やはり今回のセッションにはビリー・プレストンの存在が不可欠とビートルズは判断したのかもしれない。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その15

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【14日目】 1月23日(木)
"Freakout" Jam
この日はジョン、ヨーコ、ポールの3人による即興ジャムセッションの映像から始まる。ジョージとリンゴはまだ来ていないのだ。悪名高きヨーコのおたけびが続く。しかし、ジョン(ギター)とポール(ドラムス)はノリノリでセッションを楽しんでいる。まだジョージとリンゴがいない空間であるがゆえに始まったセッションかもしれなかった。しかし、この場面だけを見てもポールがジョンとヨーコを好意的に受け入れていた、もしくは受け入れている事をその態度で表明しようとしていたことだけはたしかである。ジョンとポールは真のパートナーだった。

だが、それにしてもほとんどのビートルズファンにとって疎ましいはずだったセッション現場におけるヨーコの存在は、このドキュメンタリーを見るかぎり非常に控えめなものであると僕は言わざるをえない。たしかにヨーコは常にジョンのそばに張り付いてはいる。が、しかしそれはセッションの妨げになるような種類のものには見えないし、あえて言えばヨーコはできるだけその姿を目立たないように配慮しているようにさえ思えるのである。つまり、ヨーコはただジョンからそばにいてほしいと言われたからそうしていたにすぎなかった。だが、誰もジョンにそれはダメだとは言えなかった・・・ただそれだけのことだったのではないだろうか。

つまり世間はジョンを直接攻撃する代わりにヨーコを攻撃し、ジョンがビートルズから降りたと言う代わりにポールがビートルズをダメにしたと叩いたのである。これがポール派の僕の主張である。
僕はこの主張が100パーセント正しいとはけっして言わないが、少なくとも3割から5割くらいは当たっていると思っている。そして、このドキュメンタリー自体がその証拠であり、真実に迫った貴重な歴史的資料と評価している。その答えはこれを観る人、一人一人が判断すればよいと思う。だが覚えておいてほしいこと、それはマスコミは常に弱いところを叩く、ということである。
「ビートルズ解散」という重荷を、ポールとヨーコさんは長い間背負ってきた。それは一般人には想像もつかない大変なものだったろう。だが、やっと2人がその呪縛から解き放たれるときがやってきたのだ。『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』は真実を映している。

"Twenty Flight Rock"
ポールがヴォーカルをとっている。

"Oh! Daring"
アルバム『アビイ・ロード』で正式採用されるが、まだここでは初期の未完成なヴァージョンである。

"Get Back"
曲の構成についてメンバー間で活発な意見交換が行なわれている。ジョージもはっきりと意見を述べている。またかなりの時間を割いてこの曲をまとめてゆく過程が描かれている。この曲のプレイバックを聴いているときにジョージが「シングルとして出そう」と意見を言っているところが映像に捉えられている。つまり、この日のレコーディングで『ゲット・バック』はほぼ完成に近づいたと思われる。

"Help!"
"Please Please Me"
ジョンがコミカルに歌い、現場にいる誰もが笑いをこらえることができない。本当にいい場面だ。

バンドはとてもいい状態でレコーディングを続けている。14日目が終了した。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その14

この記事にはネタバレが含まれます。

【13日目】 1月22日(水)
この日もコーヒーとトーストで朝食を取りながら談笑する4人の姿から1日が始まる。この映像を見ていったい誰が解散直前のグループと思うだろうか?たとえどんなに想像力を働かせたとしても、僕にはそんなことが可能であるとは思えない。たしかに多少の軋轢はあったかもしれない。だが、彼らはそれらを過去に何度も乗り越え、1969年1月のこの時点でも尚息の合った、仲の良いグループだったのだ。歴史の修正が必要である。

"Going Up The Country"
ジョンの会話の中に出てくるキャンド・ヒートの曲。ポールが即興で歌っている。

"Dig A Pony"
"I've Got A Feeling"
1日ごとに切れのある演奏になってきているのがわかる。この2曲は完成が近いようだ。

この日もジョンはよく喋る。そして、彼が喋れば喋るほどバンドの雰囲気はよくなっていくように感じられる。この日ジョンも演奏に対して様々な指示を与えているが、それらを他のメンバーはごく自然に受け入れているように見える。ビートルズ初期~中期にかけてはきっとそうしてきたのだろう。これは僕の推測だが、トゥイッケナムではジョンはその役割を放棄しかけていたのではないだろうか?それゆえバンドの秩序が乱れ始めていた。だが、たとえ一時的であったにせよ、ジョンはその役割を今一度演じることに決めたのだと思う。このときビートルズはビートルズに戻っていた。たしかにこの時点では・・・。

そして、この日一つの大きな出来事が起こる。当時ロンドンにいたビリー・プレストンがレコーディング中のビートルズを訪問するのである。実は彼らはハンブルグ時代に出会っていた。ビートルズがデビュー前の話である。

再開を喜ぶビートルズ4人。場の雰囲気はにわかに和やかになり、ジョンがビリーに早速セッションへの参加を打診する。この突然のオファーをビリー・プレストンは即答で受け入れる。

そして実際、ビリー・プレストンの参加はバンドのサウンドに驚くべき変化をもたらすことになる。それは僕のような素人が聴いてもハッキリとその違いがわかるほどのものなのだが、実のところこのドキュメンタリーを観るまではビリー・プレストンの功績がここまで大きなものだとは思いもつかなかった。今まで当たり前のように『ドント・レット・ミー・ダウン』や『ゲット・バック』を聴いていた僕にとって、それはまさしく「啓示」とも言えるほど衝撃的なものであった。
ここまでリハーサルシーンで何度となく聴き続けてきたこれらの曲が、まるで新たな命を吹き込まれたかのように躍動し、ビートルズ本来の輝きを取り戻し始めたのだ。

これは実に驚くべき事実である。ビートルズサウンドはけっしてビートルズ4人だけで作られなくてはならないものではなかった。かつてエリック・クラプトンの参加により『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』がビートルズ最高傑作の一つに数えられることになったように、ビリー・プレストンの参加は行き詰まっていたバンドに新たな方向性と突破口を与え、楽曲をさらなる高みに押し上げる原動力となったのである。

しかも、それはただ単にサウンド面だけにとどまらなかった。ビリー・プレストンという人は実に穏やかで、陽気で、周囲を明るくするキャラクターをも備えていたのである。彼は演奏している時も、それ以外の時もほとんどにこやかに微笑んでいて、ともすればピリピリした雰囲気になりがちな現場を和やかにしてくれる中和的な役割も演じていたのである。

バンドメンバーのビリーに対する称賛が続く。
ビリーを加えた『アイヴ・ガット・ア・フィーリング』の演奏を終えたあとでジョンが言う、「君は仲間だ」。ジョージ「エレピの音はいいね」。
次に『ドント・レット・ミー・ダウン』・・・ジョン「素晴らしい」。ジョージ「ビリーのお陰だ。10日も行き詰まってた。」。ポール「数週間だ」。

"Save The Last Dance For Me"
グリン・ジョンズがマスターテープを交換する間、即興で披露された曲。ジョンとポールがヴォーカルをとっている。

ビリー・プレストンの参加で大きく流れが変わった。セッション13日目が終了した。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その13

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【12日目】 1月21日(火)
今日もスタジオに一番早く到着しているのはリンゴである。
リンゴが言う、「昨日はここに入って何かほっとしたよ」。
リンゼイ・ホッグ監督「確かにトゥイッケナムは妙な何かがあったね」
リンゴ「僕らにはこっちのほうがいい」
これはビートルズだけでなく、おそらくあの場所にいた全員が感じていたことではないだろうか。僕には霊感はないが、霊能力のある人が見ればあの場所はひょっとしたら「霊的にあまりよくない場所」だったのかもしれない、などと余計な事まで考えてしまった(笑)。

アップル社地下の仮設スタジオは白壁で明るく、この部屋に入ってくる人の表情までもが明るく見える。その上リストアされた映像は驚くほど鮮明で、これが50年前に撮影されたものとはとても思えない。本当に昨日撮ったビートルズの映像を見ているようである。ビートルズが現代に蘇る。改めて現代テクノロジーの進化と、ピーター・ジャクソン監督のプロフェッショナルな手腕に感謝だ。

リンゴの次にスタジオに現れたのはジョージ。脱退騒ぎがあったにもかかわらずその表情は明るい。もうすっかり吹っ切れているように見える。

次にジョンとヨーコが姿を見せ、この日最後に姿を現したのはポールだった。

ここで重要な注釈が加えられている。それは予定されていたビートルズのTV特番が中止となり、代わりに映画が撮られることになったという説明である。つまり映画『レット・イット・ビー』は最初から制作を意図されていたものではなく、当初はビートルズのTV特番、そしてそれに伴うライヴ演奏が予定されていたということである。映画はあくまでも後付けなのだ。僕自身も今回初めてこの事実を知った。

それにしてもなんという変わりようだろう。新しいスタジオに移動した瞬間、誰もが笑って楽しそうにしているように見えるのだ。トゥイッケナムではあまり感情を表に出さなかったジョンまでもが、まるで人が変わったように笑顔がこぼれる。

"You Are My Sunshine"
ジョンが上機嫌でギターを弾きながら唐突に歌い始める。即席のコントロールルームではグリン・ジョンズが慌てる様子がカメラに捉えられている。

"New Orleans"
この日のビートルズは皆機嫌がよく、見ていてこちらまで笑顔になってしまうほどだ。冗談抜きでトゥイッケナムの呪いから解放されたかのようだ(笑)。

"Queen Of The Hop"
"Gilly Gilly Ossenfeffer Katzenellen Bogen By The Sea"
"Forty Days"
グリン・ジョンズが未だ機材のセッティングに追われている中で、ビートルズは他のアーティストの曲をランダムで演奏している。

そしてポールが言う「よし、何かやろう。ボーイズ、仕切り直しで本気でやろう。」

"Too Bad About Sorrow"
レノン/マッカートニー作。流れるのは数秒。

"Dig A Pony"
歌詞を除き、かなりレコードのテイクに近づいてきている。メンバーはトゥイッケナムの時よりもはるかに多く話し、十分なコミュニケーションを取っているように感じられる。この日のシーンだけを見ていれば、ビートルズは本当に仲がいいと誰もが思うだろう。

"My Baby Left Me"
ジョンが歌い、ポールがドラムを叩いている。そしてリンゴがポールのベースをおそるおそる弾き始める。これはおそらく午後健康診断に行っていたリンゴの不在中にポールがドラムを叩いていて、そこにリンゴが帰ってきたときの様子をカメラに収めたものと推測される。

"Hallelujah I Love Her So"
"Milk Cow Blues"
ジョンが連続してヴォーカルを取っている。

"Good Rockin' Tonight"
ポールが新聞のゴシップ記事を読み上げているところに、ジョンがヴォーカルをかぶせて歌っている。

"Dig A Pony"
ようやく録音の準備が整い、レコーディングが開始される。ジョンが「テイク1」と言っている。

"Shout!"
ジョンは相変わらず上機嫌だ。そしてこのことがバンド全体の士気に影響していることは一目瞭然である。

続いて4人は今録音したばかりの曲を聴くために即席のコントロールルームへと移動する。ドキュメンタリーの中で、この繰り返しが何度も映し出されるのだが、このことは今まで映画『レット・イット・ビー』関係の写真が「どこで」「何を」していた写真なのかを理解する上で非常に役に立った。今回のレコーディングでは、ビートルズは録音した曲を全員で何度も何度もその場で聴き直し、確認しながら作業を進めていったのである。当然のことながらプレイバックを聴く4人の表情は真剣そのものである。

レコーディングを始めたとたん、4人の演奏は目に見えてよくなってゆく。それはリハーサルの時のものとは「質的に」異なっている。まるで何か魔法でもかけられたかのように曲がタイトに仕上がってゆくのである。

"Madman"
レノン/マッカートニー作。ヴォーカルはジョン。

"I've Got A Feeling"
今日初めてポールがリードヴォーカルを取る。今日は明らかに「ジョンの日」だ。

"Don't Let Me Down"

ここでこのドキュメンタリーで初めて「キーボード奏者がいるな」という話がなされる。これはのちにビリー・プレストンの加入により現実となる。この決定はこのプロジェクトの中でおそらく最も賢明な選択の一つに数えられるであろう。

"She Came In Through The Bathroom Window"
ジョンがエレキピアノを弾いている。ポールがジョンに弾き方を教えているシーンが印象的だ。

こうして新スタジオ移転2日目(レコーディング1日目)が終了する。帰るときもメンバーは皆上機嫌で、セッションが極めて順調であることを表わしている。明らかに「何か」が変わったのである。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その12

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【11日目】 1月20日(月)
年明け1月2日からスタートしたリハーサルだったが、今日はもう1月20日。当初の予定は大幅に変更された中で新スタジオリハーサル初日を迎える。だが未だスタジオは完成していなかった。

しかし、ともかくスタジオ未完の状態で本日からリハーサルは再開され、録音は翌1月21日(火)から開始の予定となったのである。

というわけで、この日撮影は許可されず、ビートルズ4人がアップル社に入ってゆく姿だけが次々に映し出される。一つ興味深いのはジョン、ジョージ、リンゴの3人が車で現場に現れたのに対し、ポール1人だけが「歩いて」きたように見えることである。
これについてもちろん僕はなんの確信もない。しかし、ポールはロンドンの自宅からアビイ・ロード・スタジオまでよく歩いて行っていたと言われているし、このときも徒歩ではなくても地下鉄やバスを使ってなんていうのは案外あり得ることなのかもしれない、なんて思った次第。

アップル社の前にビートルズの追っかけファンがたった2人しかいなかったのも興味深かった。さあ、明日からいよいよ新スタジオでのリハーサル&レコーディングだ。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その11

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【10日目】 1月16日(木)
トゥイッケナム・スタジオ最終日
この日はマル・エヴァンズがリンゴのドラムを片付けているシーンから始まる。繰り返しになるが、世界一のバンドであるにもかかわらず、ここでも作業にバイトなどは雇わず、基本的に身内だけで何もかもこなしているところが興味深い。

なんと驚いたことに、この日ポールだけがデモ録音のため一人トゥイッケナムスタジオに姿を現し、ピアノの前で演奏を始める。

"Oh! Daring"
ここでポールが演奏したのはまたしても新曲『オー!・ダーリン!』。彼はいったい何曲ストックを持っていたのか・・・。しかも、どれもこれも並みの曲ではないときている・・・。

続いてリバプールから戻ったジョージの姿が映し出される。彼はグリン・ジョンズと共にアップル社地下の新スタジオを見に出かける。そして、そこで2人はレコーディング機材に大きなノイズが発生するのを発見することになる。

1月17日(金)
またしてもトラブル発生。すぐに2人はジョージ・マーティンに助けを求め、解決策としてアビイ・ロード・スタジオから機材が貸し出されることとなる。

1月18日(土) 19日(日)
機材の設置は週末に行なわれた。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その10

この記事にはネタバレが含まれます。

【9日目】 1月14日(火)
ジョージがいない3人のビートルズによるリハーサルが続く。
この日は冒頭からポールがピアノの前に座り、カチンコ係の青年に弾き語りを披露するシーンから始まる。まだジョンとリンゴはスタジオに姿を見せていない。

"Bonding"
まずはレノン/マッカートニーの未発表曲で小手調べ。

"Martha My Dear"
次にピアノから流れてきたのはファンにとってはとてもなじみ深いメロディー、なんと『マーサ・マイ・ディア』のイントロだ!!僕は改めてその旋律の美しさに聴き惚れてしまう。ヴォーカルなしでもいいからポールにはこの曲をライヴで演奏してほしかった・・・。

"I Bought A Piano The Other Day"
やはりポールの次に現れたのはリンゴだった。
ポール「リンゴ、調子はどうだい?」2人は上機嫌で連弾ピアノ演奏を即興で披露する。なんというか、とても心温まる場面だ。やはりポールとリンゴはかなり相性がいい。ちなみにこの曲のクレジットはレノン/マッカートニー/スターキーとなっている。

"Woman"
次に飛び出した曲はポールがかつてピーター&ゴードンに提供した曲だ。この曲に関するポールの裏話で辺りはとても和やかな雰囲気となり、リンゼイ・ホッグ監督もグリン・ジョンズも微笑んでいる。ここには人を純粋に楽しませる才能に長けたポールの性格の一端が表れている。

スタッフの一人がポールに尋ねる。「作曲はピアノ?ギター?」
ポール「近くにある物」
スタッフ「曲は頭の中に来る感じ?」
ポール「そうだ。今朝もこんな曲が頭に・・・」

"The Back Seat Of My Car"
そこでポールが歌い始めた曲はなんとアルバム『ラム』に収録された名曲『バック・シート』だ。このアルバムが発売されたのは1971年だが、1969年1月にすでに構想ができていたとは驚きである。ビートルズ後期からこの時期にかけてのポールの才能の爆発には実に驚くべきものがある。まさにその勢いは誰にも止められないといった感じだ。

"Song Of Love"
これもレノン/マッカートニーのクレジットがついた未発表曲である。

とにかくポールの即興演奏は実に実にすばらしい。彼のそばにいたら僕は何時間だって聴いていられるだろう。

その後はジョンも合流し、スタッフを交えた話し合いの場面がしばらく続く。ここはハッキリ言ってファンでなければ退屈になってしまうようなある意味冗長なシーンとも言えるのだが、よく見ればメンバーの素顔が垣間見える貴重なシーンとも言える。僕にとって特に印象的だったのは、ジョンが調子に乗って饒舌になると、ポールがとても嬉しそうな顔をしたことだ。ここに彼らの関係性の一面が現れているように思う。

"Madman"
これもレノン/マッカートニーの未発表曲。薄暗いスタジオの中でポールが懸命にベースを弾いている。

ここで撮影はカット。

ポール「ジョージは明日帰ってくるはずだ」
ジョン「明日には会えるわけだな?」

そして以下のテロップが流れる。
「翌日のリハーサルは中止され、ジョンたち3人は再びジョージと会った。」

1月15日(水) 
以下のテロップが流れる。
「会合は前向きで建設的なものになる。4人はプロジェクトの方向修正で一致する。テレビ特番は中止となった。彼らは自前の新スタジオに移って録音することに。」

4人はトゥイッケナム映画スタジオを離れ、アップル本社の地下に仮設スタジオを作り、そこでレコーディングを継続することに決めたのだった。そして、このスタジオ移転こそが、すべての状況を好転させるきっかけになるのである。

「スタジオを作ったのは、”マジック・アレックス”マルダス。新スタジオ移転は月曜に決定。

よってビートルズの4人は1月16日(木)、17日(金)はオフとなり、セッション再開は1月20日に決定された。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その9

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第2部(Part 2)

【8日目】 1月13日(月)
冒頭、黒い背景に以下のテロップが流れる。
「アルバムと特番のリハーサルが続く中、不満を抱えたジョージが金曜日バンドを脱退する。
日曜日の会合で問題は解決せず、プロジェクトのみならず、グループの先行きも不透明に・・・。」

4人揃っての日曜日のミーティングで問題が解決しなかったことが、当時の状況の深刻さを伝えている。それはまったく冗談ではなかったということだ。
ひょっとしたらジョージ以外の3人の誰かが、もしくは全員が「どうせ彼はすぐに戻るさ」と思っていたかもしれない。だが、日曜のミーティングで3人はジョージを説得することができなかった。ジョージは本気だったのである。

そして週明け月曜の朝、定刻に姿を現したのはリンゴただ一人。
このドキュメンタリーを観るかぎり、とにかくリンゴという人は時間を守る律儀な人であるらしいことがわかる。そして、その次に時間に正確なのはポールだ。

まだ薄暗いスタジオの中で、リンゴとスタッフたちの間で話し合いが始まる。しばらくしてポールとリンダがスタジオに姿を見せ、その話し合いに加わる。

この話し合いの中で重要な点は、脱退話がただ単にジョージについてだけではなかったということである。ここでポールが皆に明かしたのは、日曜日のミーティングではジョンは何も話さず、なんとヨーコが彼を代弁していたということであった。つまり問題は二重に複雑になっていたということだ。

以下、ポールの説明が続く。(少し長いが、重要な場面なので引用する)
ポール「要はジョンとヨーコはずっと一緒にいたいんだ。なら若い2人を一緒にいさせてやろう。皆ビートルズから多くを得た。だからヨーコとビートルズどちらを取ると迫れば、彼は彼女を選ぶ。」
スタッフの誰か「でも前にジョンと話したら、ビートルズでいたいと言った。」
リンゼイ・ホッグ監督「ヨーコが来る前はよく共作を?」
ポール「もちろん。減ってたがね。一緒に演奏しなくなったから。昔は朝から晩まで同じホテルにいた。音楽的には昔より演奏能力は向上している。でも肝心なのは親密さなんだ。ヨーコがいると白い壁についての曲を書いちまう。2人の好みだと思ってね。でも気に入ってもらえない。とにかく2人は一緒にいたいだけだ。だから2人に”ダメだ”なんて言うのはバカげてるよ。職場環境が悪いからストを起こすとか、”これでは働けない”なんて言っちゃダメだ。2人はやり過ぎだが、ジョンは極端だろ。”分別を持てよ”と言ってもムダさ。決めるのは彼だ。口を挟むことじゃない。」
ニール・アスピノール「でも、彼も譲歩はしなきゃ。」
ポール「譲歩させるにはまず僕らが譲らなきゃ。どちらも譲歩しないのはバカみたいだ。多分僕らには父親のようなまとめ役が要る。”恋人は連れてくるな”と言ってくれる人がね。でも解散の理由が”ヨーコがアンプに座ってたから”ではね。50年後には大笑いされるぞ。本当かよってね。”彼が女を連れ込むせいだ””それが理由?”別に地球を揺るがすような争いじゃない。」
ポール「ジョンに電話は?」
ニール・アスピノール「マルが掛けたがずっと話し中だ」

このスタッフとの会話の中でポールが示したものはジョンに対する驚くべき寛容さと、ジョンの性格を最も知り尽くしているがゆえに彼を弁護し、擁護してやろうという非常に強い意志である。ひと言でいって、このポールの対応は極めて大人の対応である。僕には20代の世間知らずのロックスターがやる対応とはとても思えない。

要するに、当時から周囲にいる誰もがヨーコを現場から排除してしまいたいと思っていたということだ。だが、誰も面と向かってはそれを言えなかった。しかし、ポールはそんなジョンとヨーコに対して驚くべき寛容さを示し、大切なのはまず彼らよりも先に自分たちが譲歩することであるとスタッフ全員に訴えたのである。これは偉大な意思表明であり、ポールが単なる目立ちたがり屋、仕切り屋ではなかったことを証明している。実際、あの状況の中にいて、これほどはっきりと事の本質を見抜き、それを全員の前で語ることができた者はポール以外にはあり得なかったであろう。いや、バンドはもっと早く空中分解していたであろう。この時点において、ポールはまちがいなくバンドの解散を阻止したのである。

そして、このドキュメンタリー全体で最もエモーショナルな場面がやってくる。
リンゼイ・ホッグ監督「ジョンに少しは協力しろと迫る気はある?」(この言葉がジョンが全体の事をまったく気にかけていなかったことを示している)
ポール(目に涙を浮かべて)「どうかな・・・」「そして2人だけになってしまった」
リンゴも目を拭う仕草を見せる。
ここで見せるポールとリンゴの表情がすべてを物語っている。少なくとも彼ら2人はバンドが解散することをまったく望んでいなかった。それだけは確かである。

そして、このあと花瓶に仕込まれた隠しマイクで、ジョンとポールが話す「本音」の会話が50年の時を経て初公開される。それは完全に2人だけのプライベートな会話であった。ジョンとポールはお互いの本音を伝え合った。そして、この会話こそが、当時の最悪な状況を改善する大きなきっかけになるのである。

この会話の中で特に僕の心に残ったポールの言葉を引用しておこう。
ポール「でも実際彼(ジョージのこと)は正しいよ。結局は僕らが悪いんだ。全員が別の方向に進んでる。でもいつか来るよ。君(ジョンのこと)が好きなように歌える日が来るさ。ジョージは何の指示もされず好きに弾ける日がね。」
ポール派の僕は声を大にして言いたい。ポールはただの自己中なヤツじゃなかった。彼はビートルズに対する大きな愛ゆえに自分が悪者になることも厭わなかったのだ、と。

そして、再びジョージと話をしようということで意見が一致する。しかし、ジョージはリバプールに帰っており、水曜までロンドンに戻らないという。

というわけで、ジョージが戻る水曜日までは3人でのリハーサルが再開されるのだった。

"Get Back"
ポールは以前と変わらないが、ジョンが心なしか何か吹っ切れたようなすっきりした表情をしているように感じられる。これもポールとの会話の結果なのか・・・。とにかく、このあとジョンが復活するのだ!

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その8

この記事にはネタバレが含まれます。

【7日目】 1月10日(金)
この日は音楽出版社のディック・ジェームズがスタジオでポール、リンゴ、リンゼイ・ホッグ監督、グリン・ジョンズらと音楽の版権等について談笑する場面から始まる。ジョンとジョージはまだ姿を見せていない。ビートルズの曲をノーザンソングスが買ったという話も出てくる。途中でジョージとジョンも合流し、本日のリハーサルが開始される。どうやら4人とも音楽出版にはあまり興味がなさそうだ。

"Hi-Heel Sneakers"
ポールも以前ライヴ等で取り上げていた曲だが、ここではジョンがヴォーカルを取っている。この日はジョンの機嫌が良く、表情もこれまでで一番明るい。

"Get Back"
なんと続いて映し出される場面は、ジョンとポールが立って至近距離で差し向かいに練習を始めるシーンである。この場面に少なからず驚いたファンもきっと多いのではないだろうか。なぜなら、ビートルズが不仲、もしくは不和の状態にあったと延々と語り継がれてきた1969年1月というこの時期において、ジョンとポールがまるで恋人同士でもあるかのように抜群のコンビネーションを発揮して、生き生きとリハーサルを行っているからである。そして、その光景を沈んだ表情で見つめるジョージの姿・・・。まさしく明と暗がくっきりと分かれ、それが見事に映像に収められた貴重な瞬間である。

それはポール対ジョン、ジョージ、リンゴではなかった。それはジョン、ポール対ジョージだったのだ、とポール派の僕はこの場面を見て深く悟ったのであった。少なくとも問題のまさに根っこはここに存在していたのである。

そのような複雑な印象を持つと同時に、僕は差し向かいで楽しそうにセッションを楽しむジョンとポールの姿に心の底から感動した。そして、彼らの関係性がちょっとやそっとでは壊れるはずがないことを実感した。間違いなくこのシーンはビートルズの歴史に新たな1ページを刻むことだろう。そして、こんなシーンが残っていたことを僕はほんとうに嬉しく思う。

しかし、一方ではジョージの「外された感」もまた半端ではない。時にはおどけながら笑顔でセッションを続けるジョンとポール、そして時に激しくドラムを叩くリンゴ・・・。しかしジョージはまったく演奏に加わる様子がない。だが、それでもジョンとポールはまるでそこにジョージがいないかのようにリハーサルを続けるのである。きっとこの光景がそれまで数限りなく繰り返されてきたのではないか・・・。そんな思いが僕の脳裏をよぎった。

ようやくギターを弾き始めるジョージ。その浮かない顔のジョージに向かって明るく演奏の指示をするポール。ポールの言葉はあくまで前向きで、けっして高圧的なものではないのだが、今のジョージにはなにもかもが気に入らないのだった。

ジョージが言う「クラプトンを呼べよ」。それに対するジョンの答えは「ジョージが要る」。ポールの答えは「君が必要なんだ。ただシンプルにやってほしい」。だがジョージは浮かない顔のままだ。ポールができるだけジョージの感情を逆なでしないよう、慎重に言葉を選びながら明るく指示を出そうとしているのが伝わってくる。だが、ジョージは納得がいかない。きっと「自分のやり方で何が悪いのか」とでも言いたいのだろう。だが、ジョンもまったく反論せず、逆に機嫌よくセッションを続けていることから、ポールの指示は基本的に妥当なのではないだろうか。

"Two Of Us"
曲が変わっても相変わらずジョンとポールは上機嫌でセッションを続けている。が、ジョージの機嫌は直らない。虚ろな表情で遠くに視線を投げかけているようだ。

そして、ついにジョージが立ち上がって言う、「辞めようと思う。バンドを辞める。」
ジョン「いつ」
ジョージ「今だ」「代わりを探せよ。音楽誌で募集すればいい。」

なんと映画の撮影中にこの貴重な場面は起こっていたのだった。まさに予期せぬハプニング。ここでリンゼイ・ホッグ監督が言う、「カット」

その後静止画に流されたテロップは・・・
「またクラブで会おう」と言い、ジョージは去っていった。
ジョージの日記
「起床。スタジオへ。昼までリハーサル。ビートルズを脱退。帰宅。」

だが僕がもっと驚いたのはそのあとである。
ジョージがスタジオを去ったのち、昼食を挟んでスタジオに戻ったジョン、ポール、リンゴの3人は、まるで何事もなかったかのように元気全開でリハーサルを再開するのである。

"I've Got A Feeling"
"Don't Let Me Down"

そして、まるでジョージの抜けた穴を埋めるようにヨーコが(悪名高き)雄叫びを上げる!しかも3人共ノリノリときている。

その後ジョージがいなくなったスタジオに全員が集まり自然発生的にミーティングが行われる。
ジョン「辞めるなら辞めさせろ」
リンゼイ・ホッグ監督「ショーやバンドは続けるの?」
ジョン「戻らないならクラプトンを入れる」
リンゼイ・ホッグ監督「脱退騒ぎは前にもあった?」
ジョン「ああ、リンゴがね」

ジョンの強気の発言はきっと不安の裏返しなのであろう。他の2人も努めて明るさを装おうとしているように見える。

ジョージの曲『イズント・イット・ア・ピティ』がバックに流れ、ドキュメンタリーの第一部が終わりを迎える。

最後のシーンは真剣な顔をしたジョン、ポール、リンゴが互いに肩に手を置き、三角形に顔を寄せ合って何事かを囁いている場面である。

そのシーンに以下のテロップが重なる。「3人はジョージと会って復帰を説得しようと決める」

1月10日(土)
以下のテロップが流れる。
「日曜 ヨーコとリンダも交えリンゴの家で会合」
「会合はうまくいかなかった」

ジョージがバンドを辞めるという衝撃的な場面でドキュメンタリーの第一部は終わる。

第一部を見終わっての僕個人の感想は、とにかく息を飲むほどにすべてがすばらしかったということだ。実際ファンにとってこれ以上のプレゼントが考えられるだろうか?いや、あり得ない。結果的にビートルズは最後の最後にこれ以上ない最高、最強のプレゼントを僕たちファンに贈ってくれたのである。彼らは文字通り彼らのすべてを僕たちに与えてくれた。ありがとうビートルズ!(第2部へ続く)

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その7

この記事にはネタバレが含まれます。

【6日目】 1月9日(木)
この日は朝「出勤」してきたポールが、マイケル・リンゼイ・ホッグ監督にリンダを紹介する場面から始まる。その後、立ち話もそこそこに、ポールがスタジオでピアノの前に座り、一人リハーサルを始める。

"Another Day"
なんとピアノヴァージョンの『アナザー・デイ』だ。ご存知ポールのソロ第一弾シングルとなった曲だが、もうこの頃すでに曲の構想はできていたのだ。

スタジオの隅で静かにポールを見守るリンダの姿も何度か映し出される。この頃のリンダは本当にきれい、というかかわいい感じである。

"The Long And Winding Road"
引き続きポールが一人ピアノ弾き語りで歌う。そのピアノに寄りかかるようにして至近距離でマル・エヴァンズが歌詞のメモを取ろうとしている。どうやら歌詞の書き取りが彼の仕事の一つでもあったようだ。ここまでのポールはとてもアイディアに対してオープンで、どんな人の意見も聞き入れようとしているところが見てとれる。
途中でポールが「♪2番はまだ決まってない~♪」とメロディーに合わせながら歌っている。なんと『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』もまたこのリハーサルの最中に作られた曲だったのだ。そして、『レット・イット・ビー』もまたポールが曲名を『マザー・メアリー』と呼んでいることからまだ完成途上であることがわかる。

『ゲット・バック』『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』『レット・イット・ビー』という永遠の名曲3曲が、このスタジオリハーサルの数日間で生み出されたという事実に僕は愕然としてしまった。のちに全米、全英1位となる名曲をたったの数日間で3曲も作ってしまったソングライターは、後にも先にもポール・マッカートニーただ一人だろうと思う。まったく驚くべき才能だ。

"Golden Slumbers"
今度はリンゴがポールのそばに来て座る。アルバム『アビイ・ロード』に収録された名曲の初期のヴァージョンをポールが歌う。

"Carry That Weight"
続いてリンゴが歌うイメージで書いたという『キャリー・ザット・ウェイト』の初期ヴァージョン。ポールが当時いかに多くの引き出しを持っていたか、またいかに曲作りに情熱を注いでいたのかが一連のパフォーマンスから窺い知ることができる。この曲の途中でジョージが「寝坊して朝食を食べずに来ちゃったよ」と姿を現す。今日も一番遅いのはジョンだ。

"The Castle Of The King Of The Birds"
ビートルズ4人の共作。ジョージが珍しくドラムを叩いている。

"For You Blue"
この曲の時にジョンがようやく姿を現す。ポールがジョージに「いい曲だ」と誉め言葉を贈っている。ここまでを観るかぎり、ポールもジョージも互いによいところは認め、誉め合っていることがわかる。

"Get Back"
この曲もまだ生まれたばかりの曲のため歌詞が確定せず、いろいろと試行錯誤を繰り返している過程が記録されている。

"Commonwealth"
レノン/マッカートニーの曲ということになっているが、リハーサル中に時事問題を即興でポールが歌にしたという感じである。

"She Came In Through The Bathroom Window"
ジョンがピアノを弾き、ポールがやや遅いテンポで歌っている。これもまだ初期ヴァージョンだが、またしてもバンドにおけるポールの貢献度が際立つシーンだ。

"Honey Hush"

"Suzy Parker"
ビートルズ4人の共作。

"House Of The Rising Sun"

"Mama, You Been On My Mind"
ボブ・ディランの曲。ジョージがアコースティックギターを弾き語りしている。

"Let It Be"
ここにきて初めてバンドが一丸となり、曲を仕上げようという意志統一が強く感じられるシーンである。メンバーそれぞれの目つきも変わり、本気モードにスイッチが入りかけた・・・という印象を僕は受けた。遊びでやっている時と、スイッチが入った時とでは音がまるで違うことを僕たちはこのあと何度も何度も確認することになるだろう。
ビートルズ4人はたしかに僕たちと同じ人間であったが、彼らが本気で集中モードにはいるとき、そこには常人を遥かに超えた世界が、そしてサウンドが出現した。このドキュメンタリーはその過程を克明に捉えた作品として人類史に深く刻まれるであろう。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その6

この記事にはネタバレが含まれます。

【5日目】 1月8日(水)
今日も先にスタジオに来ているのはジョージとリンゴである。その2人とリンゼイ・ホッグ監督が戦争やテレビ番組などについて話している場面から5日目は始まる。

"I Me Mine"
ジョージが前日の夜観たテレビ番組でワルツが流れていたことからヒントを得て書かれた曲であることが上記の会話から伺える。ちょうどスタジオに姿を現したポールに向かってジョージが言う、「昨夜僕が書いた曲を聴くかい?」「短い曲だ『アイ・ミー・マイン』」
そして、曲を聴き終わったポールの一言は「素敵だ(lovely)」。そして、ジョージに寄り添い、歌詞についてのアドバイスなどをする。おおポール、ちゃ~んとジョージの曲を認めてやってるじゃないか、とポールファンの僕が嬉しくなってしまった場面だ。
だが、この「いい雰囲気」に水を差すのが、そのあとに合流してきたジョンの言葉である。「もう帰れ、俺たちはロックンロール・バンドだぞ」。これに対するジョージの言葉は「気に入ってる」「君が気に入らなくてもいいさ。僕にはピタッときてる。」
この場面を観てもわかるとおり、ポールとジョージは必ずしも仲が悪かったわけではなく、お互い言いたいことを言い合えるフランクな間柄だったといえるのではないだろうか。ただ、ジョージは長年溜まりに溜まったものがあったがゆえに、年下でありながらジョンやポールにとっては生意気な弟分に映った・・・というのが現時点での僕の観察である。

続いて映し出される場面は、ジョンとポールの興味深い会話である。
ポール「曲書いてきた?」
ジョン「いいや」
ポール「ダメ?」「この先マズいぞ。」
ジョン「切羽詰まってからが僕は強いのさ」
ポール「演れるブツがほしい」
ジョン上を見ながら「日曜日は休みだろ」
ポールも上を見ながら「届けてほしいね」
ジョン「ロックンロールを」
ポール「そうしてほしいね」

上記は着実に曲を準備しつつあるポールと、以前のように思ったとおり曲が作れず焦り、苦しんでいるジョンの対照的な姿が映し出されている。しかも、ジョンは一切泣き言は言わない、いや言えない状況にあったのだろう。ビートルズはずっとジョンとポールの2本柱でやってきた。しかし、ここにきても易々と名曲を生み出すポールに比べ、曲作りが遅々として進まないジョン・・・。その内心は非常に不安定な状態であったにちがいない。しかも、ジョージまでもが今まさにソングライターとしての資質を開花させようとしているのだった。

次にリンゼイ・ホッグ監督とビートルズの4人はまたしてもショーの内容について意見を出し合う。しかし、いろいろな案は出るものの、依然として考えはまとまらない。

"Two Of Us"
"Don't Let Me Down"
"I've Got A Feeling"
これまで演ってきた曲のおさらいといった感じで上記3曲が次々に演奏される。

"Stand By Me"
ジョンがソロで取り上げた曲としても有名だが、ここではポールがヴォーカルを取っている。が、残念ながらここでも流されるのはわずか数秒である。

"Maxwell's Silver Hammer"
リハーサル中にジョージのものと思われるギターが床に落ちるというアクシデントが発生。

"You Win Again"
ジョンがピアノを弾きながハンク・ウィリアムズのカバーを歌っている。

"I Me Mine"
曲に合わせてジョンとヨーコがダンスを踊っている。

続いてリンゼイ・ホッグ監督がショーのセットを検討しているシーンが映し出される。だが、相変わらず考えはまとまらない。

ショーについて監督とリンゴが話している途中で印象的なシーンが登場する。リンゴがこう言うのだ、(ピアノを弾いているポールを見て)「それより僕は彼を見ていたい。聴き惚れるよ。」どうやらリンゴは昔からポールの理解者であり、ファンでもあったようだ。

そんなこんなで撮影、リハーサルも5日目が終了。丸1週間が経ったが、音楽も、ライヴも、ドキュメンタリーも依然として方向性が定まらないままである。さて、これからどうなっていくのか・・・。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その5

この記事にはネタバレが含まれます。

【4日目】 1月7日(火)
この日はジョンを除く3人がスタジオ内で会話しているシーンから始まる。

ジョンが時間どおりに来ていないのだった。しかも、それは3人にとってもはや驚くようなことではないことが彼らの会話から感じられる。ポールがリンゴに「君は遅れてきたことがないよね。君はプロだよ。」と言う。だがジョンは今日も遅れていた。そしてその事実が、ジョンが既にビートルズに興味を失いつつあることを推測させる。

だが、このあまり好ましいとは言えない状況の中で、ポールはとんでもないウルトラCをやってのける。

このドキュメンタリー全体の中でも最も重要なシーンの一つがこの直後に起こるのである。

"Get Back"
この状況に業を煮やしたポールがまるで新しいアイディアを探るかのように一人でベースをかき鳴らし始めるのだ・・・。

最初、それは何かまったくわからない。しかし、次第にそれはある曲の形を取り始める・・・。そう、それはファンの耳には馴染みの深いある名曲誕生の瞬間だった!!

こんなことがあっていいのだろうか。なんと、ポールはカメラが回っている今まさにこの瞬間に『ゲット・バック』の主旋律を奏で始めたのである。僕は鳥肌が立った。それは無から有が生み出された瞬間であり、まさに名曲の一つがこの世に産声を上げた瞬間でもあった。その奇跡のシーンがフィルムに収められていたのである。

しかし、このシーンを世に出さずして、いったい何がビートルズの映画と言えるのだろう?ポールファンの僕は驚き、感激と共に怒りの感情が湧き上がってくるのを抑えることができなかった。50年前にこんなにも重要なシーンを封印したマイケル・リンゼイ・ホッグ監督の真意とはいかに???

ポール・マッカートニーおそるべし。やはりビートルズ後期のポールには神が降りていた。そして、その神通力はまだまだ健在であった。その事実をまざまざと見せつけられたシーンである。ジョンの遅刻がなかったなら、ひょっとしたらこの曲は生まれていなかったかもしれない。

その間じゅう黙って聴いていたジョージが言う、「それいいね。音楽的に最高だ。」ここでもジョージはポールに対して冷静に、極めて正当な評価を下している。そして一緒にギターを弾き始める。これはもう立派な共同作業である。

そうこうするうちにジョンが姿を現し演奏に参加し始める。リンゴも移動してドラムを叩き始める。本日のリハーサルが開始される。

次に映し出されるシーンは、マイケル・リンゼイ・ホッグ監督とビートルズの4人がどのようなショーを行うかを話し合う場面である。活発な意見交換を行ってはいるが、話しているのはほとんどが監督とポールの2人だけ。ジョンはまだ夢の中にいるかのようで、あまり話さず、やや目も虚ろである。ドラッグでもやってきたのか・・・。僕は時折その表情にある種の狂気さえ感じてしまった。

"Maxwell's Silver Hammer"
ポールがメンバーたちに明確な指示を与えながら曲を作り上げてゆく過程が記録されている。パーソナル・マネージャー兼ロード・アシスタントのマル・エヴァンズが子供のように目を輝かせながらハンマーを叩く場面も印象的だ。この人はドキュメンタリーの中でビートルズ以外に頻繁に顔を出す登場人物の一人である。またこの作品の中でかなり重要な役割も果たしているので、彼については何度か書くことになるであろう。

"Across The Universe"
ジョンが歌詞がタイプされた紙をマイクスタンドに貼り付けて、それを見ながらリハーサルを行なっているのがなんともご愛敬。譜面台ぐらい先に準備しておけよとも思うのだが、細かいことにこだわらない、このリラックスした雰囲気がビートルズ本来の姿なのかもしれない。

"Rock And Roll Music"
画面に「66年ワールドツアーのオープニング曲」というテロップが流れ、日本武道館公演の様子がリハーサル映像と交互に映し出され、リハーサル4日目の映像が終了する。

超名曲『ゲット・バック』の出現という大きな収穫はあったが、リハーサル自体はあまり進んでいないように思われる1日であった。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その4

この記事にはネタバレが含まれます。

【3日目】 1月6日(月)
土日休みを挟んでのリハーサル3日目。

未だ十分な機材がそろっていないトゥイッケナム映画スタジオにジョージの私物である8トラック録音機が運び込まれる。

ビートルズほどのグループがリハーサルを始めるのにほとんど何も機材がそろっていない・・・。しかし、メンバーたちも大した不快感を表わすことなく高価な私物機材を現場に提供する・・・。時代が違うと言ってしまえばそれまでだが、なんとも言えぬ人間としての大きさ、おおらかさを感じてしまうのは果たして僕だけだろうか。

それにしても、当時すでに音楽界の頂点に君臨していたはずの4人だが、彼らの言動は実に自然で嫌味がなく、まったく偉そうにしている印象を与えないのは驚くべきことであると思う。

"You Wear Your Women Out"
"My Imagination"
3日目のリハーサルシーンはビートルズ4人による共作ナンバー2曲から始まる。ファンならばもう少し聴いてみたいと思うところだが、残念なことにどちらも数秒しか流れない。このドキュメンタリーでは多くの曲が演奏されるが、最終的にアルバムに採用された曲以外のほとんどの曲は10秒以内に切られてしまう。それは編集上やむを得ずなのか、それとも聴くに値しないという判断なのか、そのあたりは未だ不明である。いずれにせよ、さらに長い『ゲット・バック完全版』がいつの日か公開されることはおそらく間違いないであろうと個人的には思っている。

"Don't Let Me Down"
おそらくこのドキュメンタリーで最も多く演奏される曲の一つである。この日のリハーサルでは特にコーラス部分に試行錯誤する過程が克明に記録されている。ここでは主にポールが主導的な役割を果たし、なんとか曲をまとめようという意気込みが強く感じられる(しかしけっして高圧的ではなく協調的である)。
トゥイッケナム映画スタジオにおけるリハーサル全体に言えることだが、ここでのジョンは総じて発言が控えめに思われる。この場面でも曲自体はジョンのものであるにもかかわらず、あえて主導権をポールに握らせているようにさえ感じられる。
面白いのはさんざんいろいろやったあげく、ジョージがかなり辛辣な言葉で曲の仕上げ方に文句を言っていることである。彼がここまで直接的であるというのは多くの人にとってきっと驚きであるにちがいない。しかも、「彼の主張は正しく思われる」のである(笑)。

だが、リハーサルは遅々として進まない。それは以下のジョージの言葉に表れている「ざっと試したのが4曲。何も覚えてないぞ。」そして、この状況に一番焦っているのはポールである。その結果ここではこのドキュメンタリーで一番ともいえる意見のぶつかり合いも生じている。
この場面でポールは、ここ数年自分は仕切り役を演じてきたこと、だが好きで仕切り役をしているわけではないこと、他に誰もやろうとしないからやっているだけだということ、他の3人は「またか」という目で自分を見て誰も自分をサポートしてくれないこと、ジョージを責めているわけではないこと、ただこんな風にやったらどうかなと言っているだけだということ、等々をメンバーたちに向かって語りかける。

そして、このポールの発言のあと、有名なジョージの言葉が続く「わかったよ、君の望むとおりに弾く。望まないなら弾かない。君が喜ぶことなら何でもやるさ。でも、君はわかってないよ。」

上記に対するポールの答えは「とにかくやらなきゃ。何とか解決しよう。特番用に曲を仕上げる必要がある。取り組んだのはまだ4曲だけ。20~30曲は仕上げないと。ちゃんと覚えるんだ。コードを覚えれば即興だってできる。必要なソロも弾ける。とにかくサウンドの向上だよ。」

そしてポールが「とにかく他の曲をやろうか」と言いリハーサルが再開される。

ここで僕が見たものは、なんとかバンドをまとめて多くの曲をモノにしようとがんばるポールと、それに対して辛辣な言葉で返したジョージ。だが、その言葉に感情論で切り返すのではなく、極めて冷静に状況を説明し前に進もうとするポールの姿だった。

要するに、映画『レット・イット・ビー』では、前後の流れを無視して特定の言葉だけを切り取ることによって、まったく別の印象を与える結果になってしまっていた、ということである。

この場面だけを切り取ることにより、ポールはすごく利己的で、ワンマンで、相手の気持ちを理解しないイヤな奴という印象を与えられてしまった。それが悪意をもって行われたことであるかどうかは今の僕にはわからない。しかし、結果的にポールは世界中の多くのビートルズファンを敵に回すことになったことだけはたしかである。

前後を切り取らないで、この場面の全体像を視聴者に見せることにより、ピーター・ジャクソン監督は事の真相を世界に知らしめたのである。ポールファンである僕にとって、この場面はポールが失われた威信を完全に回復した歓喜の瞬間であった。ポールの深い傷もきっと癒されたことであろう。

"Two Of Us"
そして、ある意味これだけの口論があったにもかかわらず、その後もポールとジョージはまるで何事もなかったかのように言葉をかけ合いながら"Two Of Us"をリハーサルしている。これはビートルズがちょっとやそっとの口論でバラバラになるようなグループではないことを示している。

かくして「波乱の3日目」が終了した。このあとリハーサルはどうなっていくのであろうか・・・。


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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その3

この記事にはネタバレが含まれます。

【2日目】 1月3日(金)
殺風景で暗い印象を与えていた撮影所のグレーの壁にカラフルな照明が施され、リハーサル現場は少し明るい雰囲気へと変容する。

しかし、この手の明るい壁の写真をこれまで見た記憶がなかったのはいったいどういう事なのだろうかと自問してみた。・・・が答えは出なかった。元々オリジナルのカラー画質自体が悪すぎたという側面もあったのだろうが、それにしてもリストアされた照明付きの画像はあまりにも鮮やかで、目を疑ってしまうほどである。

冒頭ではポール、ジョージ、リンゴの3人がグランドピアノの上で仲良くビートルズマガジンを読んでいるシーンが映し出される。この時期ビートルズが分裂してバラバラな状態だったとはいったい誰が言い始めたのだろうか??と、思わず疑ってしまうようなシーンである(笑)。ジョージがポールに言う、「ヒゲ似合ってるじゃん」。

"Taking A Trip To Carolina"
珍しくリンゴが自らピアノを弾きながら歌っている。しかも彼の自作曲である。

そして曲数を増やすため、ジョンとポールが昔に作曲した曲を使ってはどうか、という案が浮上する。

"Just Fun"
レノン/マッカートニーの作品で、そのさわりだけが披露される。よほどのマニアでなければ知らない曲だ。

"Because You Love Me So"
これもレノン/マッカートニーの曲だが、ポールは使えないと言う。

"Thinking Of Linking"
ポールの曲で、これはアンソロジーで3人がミニ再結成をした際に演奏された曲である。しかし、ここではわずか数秒しか演奏されない。

"Won't You Please Say Goodbye"
レノン/マッカートニーの曲だが、この曲もあまりパッとしない。

"One After 909"
いろいろやってみて、やっと採用されたのがこの曲だったのか、今さらながら目からウロコ(笑)。実際この古い曲はのちにルーフトップコンサートと『レット・イット・ビー』のアルバムにも採用されることになる。

"Ob-La-Di, Ob-La-Da"
途中からジョンも替え歌で自ら歌い、バンドがセッションを楽しんでいる感じが伝わってくる。

"Midnight Special"
一時期ポールがツアーでこの曲をよく取り上げていたのは、ジョンとの思い出からだろうか・・・などと考えてしまった。

"What Do You Want To Make Those Eyes At Me For"
マッカートニー/ジョンソン/モナコの3名による共作となっているが、詳細は不明。

"The Harry Lime Theme From The Third Man"
『第三の男』のテーマで、ジョンがギターを弾いている。

"I've Got A Feeling"
ポールの曲だが、ジョンの力を借りて歌詞の手直しをする過程が記録されている。

"Don't Let Me Down"
この曲は何度も出てくるが、ここでは短く終わる。

"Gimme Some Truth"
ジョンのソロアルバム『イマジン』に収録されている曲。

"All Things Must Pass"
ジョージの曲。ジョンがオルガンを弾き、代わりにジョージがジョンの席に座って歌う。ビートルズはジョンとポールの力が強すぎて、とかくジョージにはあまり発言権がなかったような言い方をされるのだけれど、このドキュメンタリーではジョージがけっこう自分の意見をしっかり言っているシーンが出てくる。また、他のメンバーもちゃんと彼の言葉に耳を傾けていることから、ビートルズは実際かなり民主的なバンドではなかったかと思われる。少なくともこのドキュメンタリーを観たかぎりでは。

ここで飲み物を頼むシーンが入るが、白ワインやビールを普通に頼んでいる(笑)。当時としてはごく当たり前シーンなのだが、4人共タバコはスパスパ吸うし、仕事中も普通に酒は飲むし、というわけでさすがに時代の流れを感じてしまった次第。健康的なのが必ずしも良いことばかりとはかぎらないのかも?(笑)

"I'm So Tired"
ジョンの曲だが、ポールが歌っている。他のメンバーたちも皆疲れている姿が映し出され、2日目の終わりとリンクする。

撮影とリハーサルは木曜から始まったため、今日が金曜。土、日は休みということで、3日目は翌月曜日ということになる。

ここまでビートルズの4人は精力的にリハーサルを行なってはいるが、僕が思うにまだまだ彼らは本気モードに入ってはいない。正直歌も演奏もありきたりでビートルズも人間だったのか・・・と思わせるようなレベルである。

2日間の休みを挟んで、彼らはどう変わってゆくのかを注目しよう。

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その2

この記事にはネタバレが含まれます。

Part1 2時間36分
Part2 2時間53分
Part3 2時間18分

合計 7時間47分

蓋を開けてみたら、合計8時間弱という大作ドキュメンタリーであった『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』。

その物語は1969年1月2日トゥイッケナム映画スタジオから始まる。そこは音楽専用スタジオでさえもなかった・・・。

第1部(Part 1)

【1日目】 1月2日(木)
まったく何もないガランとした撮影スタジオに、メンバーの楽器や、マイク、アンプ、照明など最小限の機材が設置されてゆく。文字通り一からのスタート。

彼ら4人に与えられていた課題は、2週間のうちに新曲を14曲仕上げ、それらを観客の前で生演奏するということだった。それをもって、彼らは1966年以来中止していたライブ活動を再開するというプランだった。

かくして、だだっ広いトゥイッケナム撮影所にて、ビートルズ4人だけによるリハーサルが開始された。ジョンの傍らにはすでにヨーコの姿もあった。

"On The Road To Marrakesh"
ドキュメンタリーはこの曲で始まる。ポールとリンゴがまだ姿を現さず、ドラムセットも組まれていない中で、ジョンが立ったままギターを弾きながらこの曲を歌っている。なお、この曲はアルバム『イマジン』に収録された『ジェラス・ガイ』の原曲のようだ。

※なお、このドキュメンタリーで演奏される曲の多くが断片的で、1コーラス以上歌われているものはビートルズ自身の曲を除いてはほとんどないことを明記しておく。

"Don't Let Me Down"
ポールがまだ姿を見せていない中で、ジョンがギターを弾きながら歌っている。ジョージもコーラスをつけている。そして曲の途中でポールが登場。『The Beatles: Get Back』のタイトルが大きく画面にかぶさる。ジョージ・マーティンや、プロデューサーのグリン・ジョンズの姿も見える。

"I've Got A Feeling"
この時のリハーサルでは、文字通り4人が顔を突き合わせて演奏している。特にジョン、ポールの2人は互いのギターが触れそうなほどかなりの至近距離で歌い、演奏している。そしてポールから見るとジョンは常に右側に、ジョージは左側に、というのがこのドキュメンタリーを見るかぎり「彼らの演奏時の定位置」である。ヨーコはジョンの横で静かに座り、編み物をしたり、何かを食べたりとかなり自由な印象だ。

4人は皆この場所の音が気に入らず、口々に文句を言い始めるが、結局数日間はそこでリハーサルを行なうことに落ち着く。

"Jonny B. Goode"
ジョージがヴォーカルをとっているように見えるが非常に短い。

"Quinn The Eskimo"
ボブ・ディランの曲だが、これも非常に短い。

"I Shall Be Released"
これもディランの曲だが、流れるのはわずか数秒。

"Don't Let Me Down"
曲の構成などについて、かなり活発な意見交換が行なわれていて興味深い。

"Two Of Us"
他の曲と同様まだまだ初期段階で、ポールが曲について様々な説明を加えている。

かくして、プロジェクトの第1日目は先行きがかなり不透明、かつ不安定な中でのスタートとなった。

僕はまずその映像の美しさに圧倒された。これを観ていると、今までの映像はいったい何だったのかと思わずにはいられない。映画『レット・イット・ビー』の暗く、陰鬱な雰囲気は、映像自体の暗さ、不鮮明さからも大きな影響を受けていたように思う。今こうして同じ場所で撮影されたリストア映像を見ていると、実はそれほど現場は暗くなかったんだと知ってなんだか救われたような気分になってしまった。

リストアされた映像は、ビートルズ4人の表情を実に生き生きと、そして鮮やかに映し出している。これは本当に奇跡以外の何物でもないと思う。また4人は皆それぞれに個性的で最高にカッコよく、そのファッションを含めまったく古さ、陳腐さを感じさせない。これもまた驚くべきことである。

僕たちビートルズファンの見果てぬ夢を乗せて、今『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』号が出航する!

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Part3も秀逸

『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』Part3を見終わった。

合計7時間以上に渡る大作であったが、見終わった今は大きな満足感と余韻に浸っている。

これで僕はビートルズが今までよりも、もっともっと好きになった(笑)

そして、この作品を見終えた後には是非『レット・イット・ビー』のアルバム、できればスーパーデラックスエディションを聴き直してみていただきたい。

きっと、このアルバムが以前よりも100倍好きになっていることに気付くことであろう(笑)。

より詳細な感想については別途特集記事「『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想」に投稿する予定です。よろしければまたお越しください。

Thank you John, Paul, George, Ringo!!!

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の感想 その1

この記事にはネタバレが含まれます。

『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』のPart1を観終わった瞬間に、僕はこの作品について特集記事を書くことに決めた。というよりは、久々に書かねばならないという強い欲求に突き動かされていた。なんとしても言葉にして残しておかねばならないという感情に支配されていた。つまり、この作品がそれほど衝撃的だったということである。

結論から言ってしまえば、『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』は、ビートルズが残した278曲の公式オリジナルレコーディングを除くすべての作品の中で最も重要な作品となってしまった。これは現在のビートルズファンはもちろん、今後未来にファンになるであろう無数のビートルズファンにとって絶対に視聴すべき最重要の作品に格上げされたということである。映画『レット・イット・ビー』ではない。ピーター・ジャクソン監督の『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』がそうなったということだ。

今この衝撃は世界中に静かに広がっている。

なぜなら、この作品を本当に心の底から待ち望んできた人々というのは、おそらく50代から70代くらいの中高年世代に集中していると思われるからだ。彼らの多くが人生の絶頂期を過ぎ、様々なアップ&ダウンを経験した上で、今残りの人生を楽しんでいる。彼らはちょっとやそっとのことで大騒ぎはしない。だからその衝撃度の割に、世界は以前と同じままであり、驚くほど静かに思える。だが、そのインパクトは確実にじわじわと世界中に浸透しているし、今後も広がり続けることだろう。それほどこの作品が重要であるからだ。

この歴史的瞬間にファンの一人として立ち会えたことを本当に嬉しく思う。これから少しずつこのすばらしい作品を紐解いてゆくとしよう。(続く)

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Part2はさらにさらに素晴らしい

ビートルズファンであれば、誰しも『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』Part1を食い入るように見入ったであろう。

もちろん僕もその一人である。そして、そこには可能な限り最も真実に近いビートルズの姿がそこにあったと思う。もちろんカメラの前ということで、多少の演技や見せかけもあったかもしれない。だが、そもそも完全に素の彼らの姿など我々一般人が知り得るはずがないのだ。

そういう意味ではこれまでに公開されたいかなるビートルズ関係の映像の中でも、「最も真実に近い」素顔の彼らがそこに映し出されている・・・と僕は思う。

そして、Part1は僕の予想を遥かに上回ってすばらしかったが、Part2はさらにその10倍もすばらしかった。小さなスタジオに拠点を移した彼らは、まるで水を得た魚のように生き生きと語り、笑い合い、演奏していた。それはまたしても僕の予想を遥かに超えたものだった。

Part1が2時間36分。Part2は2時間53分。3部作で約6時間のドキュメンタリーと聞いていたが、Part1、2だけで既に5時間29分という大作となっている。おそらくアップルビル屋上でのライヴ(完全版?)が含まれると思われるPart3がいったいどうなるのか?本当に楽しみで仕方がない。

Thank you John, Paul, George, and Ringo!!!

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『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』配信始まる

残念ながら日本時間の0時に公開とはならなかったが、ついにディズニープラスチャンネルで『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』の配信がスタートした。

まだパート1の半分ほどしか観ていないが、もうこれはビートルズ史上最高最強のドキュメンタリー映画であることはまちがいない。

本当にすばらしいの一言であり、これを完成させたピーター・ジャクソン監督にまずは深い感謝の意を表したい。

ビートルズ解散から50年後の奇跡・・・。これほどまでの感動が待っていようとはいったい誰が予想したであろうか。

ビートルズはやはり史上最高のグループである。

今はとにかく感動以外の言葉が見当たらないが、後日時間をかけて個人的な考察をブログ上で発表したいと思う。

Thank you John, Paul, George, Ringo!!!

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マッカートニー3,2,1

全世界のビートルズファンの皆様、おめでとうございます(笑)。

ついに明日11月25日『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』のパート1がディズニープラスチャンネルで公開される。

しかも、我々日本人は時差の関係で世界で最も早くこの記念すべきドキュメンタリーを目にすることができるものと思われる。

僕はといえば、当日は夜勤なので25日の0時になったら職場で早速視聴可能かどうかを確認しようと思っている。


というわけで、間もなく史上最強のビートルズフィルム『ザ・ビートルズ:ゲット・バック』に世界中が度肝を抜かれることになるわけだが、なんと同じディズニープラスチャンネルでポールの最新ドキュメンタリーが配信されることがわかったので、今日はそれについて情報共有しておこう。

ドキュメンタリーのタイトルは『マッカートニー3,2,1』
してその内容は、ポールが音楽プロデューサー、リック・ルービンと共に楽曲にまつわる制作秘話を1対1で語り合うというシンプルだが非常に興味深いものとなっている。全6話構成。
ちなみに配信は12月22日からということで、これは間違いなくゲット・バック目当てで1か月限定でディズニープラスに入会したビートルズファン向けの「解約対策」と思われる(笑)。さらに調べてみたところ、このドキュメンタリーはすでにHuluなどの有料チャンネルで配信済ということだ(知らなかった僕が恥ずかしい・・・)。

以下はYouTubeの予告編である。



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ULTRA HDのプレイリスト

アマゾンミュージックの高音質版が追加料金なしで聴けるようになってからというもの、僕はずっと最高音質の"ULTRA HD"にはまりっぱなしである(笑)。

それでとうとうULTRA HDの楽曲のみでプレイリストを作り始めてしまった。といっても、もちろん何でも手あたり次第にではなく、特別好きな曲ばかりを集めたULTRA HD専用のプレイリストである。

そうやって実際に曲を集め始めてみると、意外とULTRA HDの曲というのがまだまだ少ないということがわかってしまった。ULTRA HDの下のHD音質に関してはざっと全体の8割~9割といった印象だが、CDを軽く上回るという最高音質のULTRA HDはまだまだ全体の1割以下という感じである。

というわけで、実際にはお目当ての曲がまだまだ全然入れられていないというのが正直なところなのだが、とりあえずは約100曲ほどのプレイリストができた。

管理人作成、ULTRA HDのプレイリスト

こうして出来上がったプレイリストをランダム再生で聴き始めてみると、理屈ではなく音楽を聴くことの喜びがふつふつと湧き上がってきて、簡単には音楽を聴くことをやめることができない自分に本当に驚いてしまう。そして何時間聴いていても疲れない不思議。

そして今痛切に感じていることは、音楽とはまさに「血が通った生き物」であるということだ。僕たちがCDや、MP3などの圧縮音源で聴かされてきたものは血を抜かれたパサパサの干物のようなものだったのだ。事実僕は30代~40代の頃、突然音楽を聴くことに興味が湧かなくなってしまい、それはただ年齢による感覚の衰えか何かだと勝手に思い込んでいたのだが、今ではそれがまちがいであることを知っている。というのも実際僕は今10代の頃とほとんど変わらないほど音楽を聴きまくっているからだ。それは年齢とはまったく関係がなかったのだ。

しかも、僕はハイレゾ専用の機器を揃えてULTRA HDを聴いているわけではない。僕はただiPhoneと1万円程度のワイヤレスイヤホンだけで十分に音楽が堪能できている。だが、それなりのお金をかければいったいどれほどの感動が待っているのか・・・そこにはきっと想像もできない「原音に近い世界」が待っているにちがいない。

アマゾンプライムの会員は月額780円
アマゾン・ミュージック・アンリミテッド

よろしければ、僕の別ブログにもお越しいただければ幸いです。昭和・平成・令和 そして今を生きる

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